Suzu Masa ブログ

辛酸なめた男が美容室「経営」をリアル・ガチで語る

【経営の原理原則】シリーズ⑬~⑱

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 だったら美容師お辞めなさい

 

【経営の原理原則】その⑬

「店販品売上は信頼のバロメーター」

 

この原理原則シリーズの第1回目に「顧客が求めているのは問題点の解決策である」と述べました。

 

解決するためには、サロンでの施術ばかりでなく、日頃のお手入れ、つまりホームケアが欠かせないものです。

そのための推奨品が店販です。医師の処方箋となんら変わるものではありません。

ですから、店販品が売れないのはその人がお客様から信頼されていないからにほかなりません。

 

同じ推奨品がネットで安く手にできるから(だから売れない)と反論する人もいます。

いやいや、信頼があれば、「あなたから買いたい」となるはずです。(そんな消費者心理は別の機会で説明したいと思います)

 

「私たちは物売りじゃない?」

それはプロとして責任放棄をする詭弁に過ぎません。

だったら美容師お辞めなさい、と言いたい。

 

ミッションの偉大さ

 

【経営の原理原則】その⑭

「モチベーションではダメ。マインドセットがモノを言う」

 

業界にもモチベーションを売り物にするコンサルがいるようです。確かにスタッフをセミナーに通わせれば、やる気モードは飛躍的に上がるでしょう。

ところが、やる気は3日と続きません。あのセミナーの熱く燃え上がった気持ちもとたんに冷えてしまいます。

 

なぜなら、やる気を継続させる仕組みがないからです。

 

それでまた、自分自身も、スタッフも、鼓舞させるためにモチベーションのセミナーに通う。

そんな繰り返し。一時的な熱気に酔いたいがために。これでは本末転倒、お金と時間の無駄です。

 

マインドセットとは、端的に言えば、経営者の事業の目的や使命感(ミッション)に共鳴すること、心から賛同することが欠かせないのです。だから意識の状態が何段かギアアップして、そのままの状態を長い間保てることができるのです。

 

「私なりに考えたその使命というものについて、従業員に発表し、以来、それを会社の経営基本方針として事業を営んできた。従業員も私の発表を聞いて非常に感激し、いわば使命感に燃えて仕事に取り組むという姿が生まれてきた。一言にして言えば、経営に魂が入ったといってもいいような状態になったわけである。」(松下幸之助

 

「信念が変われば 思考も変わる

 思考が変われば 言葉も変わる

 言葉が変われば 行動も変わる

 行動が変われば 習慣も変わる

 習慣が変われば 人格も変わる

 人格が変われば 運命も変わる」

 (ガンジー

 

あなたのお店の、会社の、ミッションはなんですか?

それを従業員に浸透させて行動まで落とし込むために、具体的な方策(仕組みづくり)をしていますか?

 

繁栄か衰退か、それを決するのはミッションであると言っても過言ではありません。

 

 

肺肝を見るごとく

 

【経営の原理原則】その⑮

「あなたは2つの眼でしか物事を見ることができないが、スタッフは人数×2の眼であなたを見ている。それも、とても厳しく」

 

中国の古典『大学』の中に次の言葉があります。

「人がおのれを視ること、その肺肝を見るがごとく」

 

『大学』は儒教の教書の中でとくに重要とされる四書の中の1つです。ちなみに四書とは『論語』『大学』『中庸』『孟子』のことで、さらに四書五経といって五経とは『易経』『書経』『詩経』『礼記』『春秋』のこと。この四書五経を学ぶことは当時の中国のエリートたちにとって必須のことでした。

日本でも江戸時代には寺子屋を通じで広く庶民が四書五経を学習しました。だから識字率の高さは世界一で、その教養の高さに日本を訪れた当時の外国人たちは一様に驚いたといいます。

 

そして、こうも思わせたのです。「日本民族は侮れない」と。中国(清)を侵略したようにアヘン戦争など仕掛けて日本民族を手玉に取るのは困難だと。話が脱線しました。

 

東洋思想を現在の経営に活かしたい私としては、おおいに強調したい言葉がこれです。

「人が自分を視る」見るとしないで、わざわざ「視る」としているくらいですから、ねっとりとした視線のねばつきを感じます。それくらい見られているわけ。

 

何を? 自分のことを。まるで「肺肝を見る」ように。肺臓や肝臓まで見抜くほどにも他人の眼に鋭く見られているということ。

 

スタッフ(社員)からはもっと厳しく見られていると思ったほうがいいです。30人のスタッフがいれば厳しい60個の眼で経営者を観察している。

100人のスタッフがいれば、200個の眼で見られているというのは現実的ではないとすれば、10人の店長と本部スタッフの数十個の眼で日頃から経営者は観察されているのが実情に近いでしょうか。店長はそれぞれ10人のスタッフがいれば20個の眼で観察されているのです。

 

どんな目で?

「肺肝を見るように」鋭く見られているということです。

だから表面を取り繕ってもダメです。すぐ見抜かれます。

トップに立つとはそういうことです。

 

そして『大学』はその言葉の次にこういう言葉を継ぎ足しています。

「ゆえに君子は必ずその独(どく)を慎むなり。」

 

だからリーダーたる者は、必ずおのれ自身を慎んで修める修行が大事だというのです。

リーダーたるに相応しい人格を身につけなければならない、というわけ。「独を慎む」ですから、人の目に触れない一人のときであっても、常に自分自身の身を、言動を慎むこと。

 

ところがSNSなどでは、うまいものを食った、うまい酒を飲んだ、ブランド物を身に着ける、高級外車を乗り回すといった写真や記事を自慢気に載せる人がいるようですが、スタッフからどういう眼で見られているか想像力をちょっと働かせてほしいと思うのですね。

 

独を慎むためには良書にふれること。なかでも良書の最高峰が『論語』だと確信します。

 

入るを量りて出るを制す

 

【経営の原理原則】その⑯

「入(い)るを量りて出(いず)るを制す」

 

儒教の経典『礼記』に記されている財政の心構えです。正確には「入るを量りて出るを為(な)す」。

二宮尊徳の言葉で知られ、最近では稲盛和夫氏がJALの再生を引き受けたときに記者会見で語ったのもこの言葉です。

 

古くは、米沢藩を立て直した上杉鷹山がいます。みずからが倹約を旨とし、生活を切り詰め、食事は常に一汁一菜で、衣類も絹物は着用せず、一生、木綿服で通したと言われています(出るを制す)。

 

そして、荒れた農地を耕し、特産物生産を新興し、農村経営の多角化による収益の構造改革を推進した(入るを量る)。

(私が私淑する山田方谷は鷹山を上回る発想とスケールで備中松山藩の財政を立て直しましたが、敗れた幕府側の賊軍に属していたため歴史の表面から葬り去られました。長くなるのでここではふれません。)

 

現在のように、「入る(収入)」が減るのが当たり前の経営環境のなかでは、「出るを制する(経費削減)」で無駄な出費は極力抑えた予算を作成し、剰余金(繰越金)を必死で生み出すこと。

そして生み出した剰余金を未来の売上の核となる新規事業創出や人につぎ込んでいく。

これこそ「入るを量りて出るを制す」という真の意味であり、今のコロナ禍、最も求められている経営姿勢であるでしょう。

 

顧客満足従業員満足

 

【経営の原理原則】その⑰

顧客満足=価値>価格

 顧客不満足=価値<価格」

 

支払った価格(料金)以上の価値を受け取れば満足。反対に、受けた価値以上の価格だったとしたら不満足となります。

 

だから、価格というのは、絶対的な安い・高いという基準はないということ。受けた満足の度合いによって、満足か不満足かが決まるのです。

つまり、個人個人の相対的な価値によって決まるということですね。

付近のお店よりも高い料金であってもお客様は満足して通い続けている。反対に、安い料金であっても、いつも新規客ばかりで固定客にならない。そんな例はどこでも見受けられます。

繰り返します、料金に絶対的な値決めはないということです。近隣のお店を相場として料金決定をしてしまうと、取り返しのつかないことになってしまいます。

 

これが価格決定メカニズムの一筋縄ではいかないところなのですが、要は、いかに満足する層を特定し、集客し、満足する価値を提供できるか、なのです。

 

そうすれば、同業他店とくらべて高い・安い・値ごろなんて発想は不要となります。

いかに自店の独自性を打ち出していったらよいか。

そういう思考の習慣づけが、新たな価値の創造につながる、あなたのお店の独自性や卓越性を見い出す原動力となるのですね。

 

 

【経営の原理原則】その⑱

「望む利益は従業員満足次第」

 

従業員が満足して働かなければ、望む利益は得られません。

利益とは顧客満足の総量ですから、従業員が満足して働いていないお店ではお客様も満足しないのです。

 

まして理美容業のように、人的なサービス100%で成り立つ業界であればなおさらです。

ブスッとしていて愛想のひとかけらもない人に接客してもらったら、お客様は悲劇というもの。満足どころか、不満足しか残らない。いや、それどころかクレーマーの発生となってしまうかもしれない。そしてSNSで言いふらされたらたまったものじゃありませんね。

 

だから、儲からない。原理原則です。

 

従業員満足に絶対欠けてはいけない2つのこと。

それは「物」と「心」の両面で初めて満足は実現できるということ。これも原理原則です。

物心の「物」とは、給料をベースにした労働条件の満足のこと。「心」とは、経営者であるあなたのミッションとビジョンに心から共鳴して働くことです。最強なのは、経営者であるあなたのビジョンと従業員のビジョンが一致すること。

 

以上17、18の内容については、私の過去のブログ「経営は原理原則で成り立つ」を参照していただきたいと思います。

 

≪つづく≫

 

「私はイチゴクリームが好物だが、魚はどういうわけかミミズが大好物だ。だから魚釣りをする場合、自分のことは考えずに、魚の好物のことを考える。」

デール・カーネギー

 

【経営の原理原則】シリーズ⑧~⑫

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売上予測が5%と狂わない

 

 【経営の原理原則】その⑧

「理美容業はフロービジネスの典型。それをいかにストックビジネスへとシフトしていくかで経営の安定性は高まる」

 

理美容業は典型的なフロービジネス。言ってみれば、来店するかしないかは、たとえ予約制度が生きていたとしても、お客様のその日そのときの都合任せ、気分任せ、天候任せに左右されてしまい、安定するものではありません。

 

(株)田谷が美容室で初の株式の上場をするにあたって決定打となったのが、月売上が5%と狂わなかった、売上予測の正確性と予測に裏打ちされた経営の安定性によるのです。つまり同社では業界で初めて“賞美”期限(提供したヘアスタイルの維持保証期間)を設けて次回の来店管理を美容室主導で行ったことなのですね。

 

つまり、フロービジネスからストックビジネスへシフトするには、

・固定客の割合をいかに多くするか。

・さらに固定客からファン客へといかにシフトしていくか。

・また次回来店をお店主導でいかにできるか。

にかかわってくるのです。

 

もちろん、他の、まったく新しい新規事業でのストックビジネス(たとえば顧客情報をもとにしたECサイト構築や異業種とのアライアンスなど)への展開もここに含まれます。

 

現在のサロン業績の差は、このストックビジネスへいかにシフトできているかの差。

既存客との関係維持・強化に真剣に取り組みましょう、って何度も申し上げていることですが。

 

 

イノベーションは他者依存ではダメ

 

 

【経営の原理原則】その⑨

イノベーションは、製品や技術で引き起こされるのはマレ」

 

ドラッカーは「イノベーション7つの機会」として、新しい知識、つまり新しい製品や技術によって引き起こされるイノベーションの機会は一番低いと言っています。

 

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これは簡単に納得できることです。

こんな新しい製品が開発されたと言っても、開発者であるメーカーはシェアナンバーワンを企業論理として持っているわけで、どこよりも早く新製品を導入したお店であっても先行者利益はわずかな期間に過ぎません。それが良いものであればあるほど一気に業界に普及してしまって先行者利益はなくなります。

結局、どんな技術であれ製品であれ、やがて業界に普及していけばそれが業界標準(スタンダード)となってしまって、イノベーション効果はすぐに失せるのですね。

 

製品や技術に依存していては、最後に痛いしっぺ返しを食らいます。

理美容室をテストマーケティング出先機関と位置付け、何度も利用され、最後にはハシゴを外されてパブリック市場へと流れていった事例は枚挙にいとまがありません。

 

ではどんなイノベーションの機会があるのか。それをどうやって見つければよいのか。

簡単なことです。ドラッカーイノベーションの7つの機会、その2番目に掲げてあることですが、理想と現実のギャップが存在するところはすべてイノベーションの機会があるということです。

たとえば、人の採用難、集客難。ここのギャップをどうやって埋めるか、その解決策こそイノベーションにほかなりません。

 

 

経営者の「器」とは?

 

 

【経営の原理原則】その⑩

「組織は経営者の器以上に大きくなれない?」①

 

なぜ「?」マークを付けたのかというと、一見真実のようでじつは真実ではないからです。

長くなるので、①②に分けてお伝えしたいと思います。

 

経営者の器を形成するには「技能力」「戦略立案・コミュニケーション力」「人間力3つの「力」が必要と言われています。(※それぞれの力についての説明は省く)

そして、器を大きくする順番は「人間力」→「戦略立案・コミュニケーション力」→「技能力」。

 

技能力は本来、スタッフが仕事に使うスキルで、このスキルをいくら磨いたところで社長の器は大きくなりません。それどころか、技術者同士のプライドが働いて、自分よりスキルが上のスタッフを排除さえします。ナンバーワン売れっ子スタイリスト=社長という見事な図式が出来上がります。

こうなると、一技術者の器以上に組織は大きくなるものではありません。こういうケースは技術主導の業界であるからか、数え切れないほど多くの実例にぶつかります。

 

次に「戦略立案・コミュニケーション力」。このスキルは、思考力や行動力といったように、ビジネスの構想力や人を動かす行動力に深くかかわるスキルです。経営者の器を大きくするには、一定レベルまで磨く必要があります。

このレベルの経営者も少なからず存在します。

 

しかし、最後の「人間力」、これが経営者の器を大きくする必須の要素となるのです。哲学や価値観、志、信念や基本的ポリシー、度量や徳性といった、その人間の有り様を表すヒューマンスキルのことで、他者への影響力に大きくかかわるスキルなのですね。

 

だから、人間力を磨けば磨いただけ経営者の器は大きくなります。大きくなればなっただけ組織は大きくなるというわけです。

 

では、どうやって経営者としての器を磨けばよいか、次でお伝えしますね。

 

 

【経営の原理原則】その⑩

「組織は経営者の器以上に大きくなれない?」②

 

どうやって経営者の器を磨けばよいのか。

経営者の器を磨く必須の要素として「人間力」を挙げました。人間力とは、哲学や価値観、志、信念や基本的ポリシー、度量や徳性といった、その人間の有り様を表すヒューマンスキルのことでしたね。

 

人間力を磨き上げるためには、「無知の知」を徹底的に実践することだとしかるべき指導書には書いてあります。

 

たとえば『論語』には「知るを知るとなし、知らざるを知らずとなす。これ知るなり」という、私の大好きな言葉がしたためられています。無知であることを自覚することで謙虚に学びの姿勢が取れる。謙虚に学べば学ぶほど無知を克服していって、確実に成長をしていくということ。

 

トップであっても驕ることなく、素直な気持ちで無知の知を実践していくと、物事を本質的にとらえることができるようになり、ぶれない哲学や信念が身に付き、志が醸成されるということです。

また、人の苦労やモノの価値も正確に理解できるようになるので、裁量や度量も高まっていく。

 

私の経験からも同じことが言えて、つまり謙虚な経営者ほど素直に言うことを聞いてくれて、望む結果が得られています。一方、過去の成功事例が邪魔をするのも大きな要因だと思いますが、謙虚ではなく、学ぶ姿勢に欠ける経営者は、真逆の結果を招いています。

 

人間力が大きくなると、自然と経営者の器も大きくなり、経営者の器が大きくなるほど、優れた異能の人物が経営者の周りに集まるのですね。

 

鉄鋼王アンドリュー・カーネギーの墓碑銘にはこういう言葉が刻まれています。

「おのれよりも優れた者に働いてもらう方法を知る男ここに眠る」

 

これが経営者の器以上の組織になれることの秘訣です。

このレベルの人にはなかなかお目にかかれないのが現実です。

私の交友範囲で言うなら、はっきり言って、五指に余ります。

 

 

野心と志との決定的な違い

 

 

【経営の原理原則】その⑪

「組織は頭から腐る」

 

事業再生のプロ中のプロである冨山和彦氏に言わせれば、経営の悪化した企業に共通していたのは、「一流の現場を持ちながら、経営が三流だった」ということだそうです。

 

経営のトップに上り詰めれば、誰も意見を言わなくなる。それをいいことに、いつの間にか裸の王様になってしまいます。

やがて現場とのズレ、市場とのズレを来していることに気付かなくなって経営不振に陥ります。

 

そして不振の原因を、他人のせい、時代のせい、環境のせいにする。ある大企業のトップが報道陣から責任をしつこく追及されると、「私だって全然寝ていないんだ」と声を荒げて抗議したのは有名なシーン。これなど典型的な原因他人論ですね。

 

すべての原因はトップである経営者自身にあります。

ビジネスで問題にぶつかれば、それは自分自身が問題を作ったということ。

スタッフの離職や意思疎通の悪化、相互不信など人間関係の問題にぶつかったなら、それはあなたが人の扱い方をわかっていないから。

資金繰りに窮するなら、お金について何も知らないから。

集客が思うようにいかなければ、それはマーケティングを知らないから。

顧客の問題なら、顧客を理解していないから。

すべては外側ではなく内側の問題。内側のトップである、あなたの責任。

 

また、腐る原因にはこういうのもあります。

私利私欲の野心でビジネスに携わっていること。

野心とは、自分のため。

志とは、世のため人のため。

 

残念ながら、私が数万人の経営者にお会いしてきて言えることですが、圧倒的に「野心」の人が多いように思います。口では志を言っていながら。

 

「利によりて行えば、怨み多し」(論語

私利私欲で行う野心的な事業は、他人から怨みを買い、結局長続きしない。

 

現代のわが国にも、立派な経営者の言葉があります。

「動機善なりや、私心なかりしか」(稲盛和夫

 

経営者としてひたすら人間を磨くことですね。寸時も休むことなく。

そんなの面倒臭いと言うのであれば、ストレートな言い方をします、それなら経営者をおやめなさい。そう言いたいですね。

 

 

理想のお客様の集め方

 

 

【経営の原理原則】その⑫

「顧客は誰か?それは上位2~3割の上位客が知っている」

 

ドラッカーの「経営者に贈る5つの質問」の1つ。あなたのお店の顧客は誰か? どういうお客様があなたのお店の理想のお客様か? 理想のお客様を見つけ出す方法は? 見つけ出せたら、どういう方法で集客すればよいのか?

 

すべての答えは現在の上位客が持っています。だから上位客に謙虚に聞けばいいのです。「こんなに多くの美容室があるなかで、どうしてうちのお店に通ってきてくださるのですか」と。あなたの経営のお役に立つことだったら、そこは上位客のことです、積極的に語ってくれるものです。

 

通い続ける理由は、丁寧な接客と的を得たカウンセリングかもしれません、気に入ったカット技術かもしれません。それらの声を集めてひとつの文章にまとめる。これがキャッチコピー。もっと言えば「USP」となります。

 

そして、上位客が住まう地域はどこか。その地域は他とは違った特長があるはずです。そう、上位客が住まう地域であっても、まだあなたのお店の存在さえ知らないし、来店していない人が圧倒的に多いはずなのですね。

そういった地域をデータ抽出する無料のやり方があります。以前にも何度か説明した郵便局のGISのことです。このシステムを使って集中的にチラシポスティングするのです。アナログなやり方とバカにしてはいけません。想像以上に効果が大きいですから。さらにGoogleマイビジネスを駆使すれば効果は倍加します。

 

これが、あなたのお店がぜひ来てほしいという潜在客に確実にリーチする方法です。

大切な集客を他者依存にしていてはいけません。コストばかりがかさむし、そんな方法では、理想のお客様には振り向いてももらえないと思ってください。

 

≪つづく≫

 

「死んだときに墓場で一番のお金持ちになりたいとは思わない。

私にとって重要なのは、眠るときに自分たちの素晴らしいことをしたと言えることだ。」

スティーブ・ジョブズ

 

【経営の原理原則】シリーズ①~⑦

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好評の原理原則シリーズ

 

Facebookに連続で投稿して好評だった「経営の原理原則」シリーズ。

内容を多少改訂してまとめてみました。

今回は①から⑦まで。

 

混迷を極める現代だからこそ、経営の原点、基本のキに返ることはとても重要なことです。はっきりしましたね、このコロナ禍にあって、順調な業績をあげているのは、原点に立ち帰って、つまり原理原則を理解して地道に実践しているところなのです。

 

 【経営の原理原則】その①

「顧客が求めているのは問題点の解決策である」

 

にもかかわらず、問題点を明らかにしないで、問題点を解決する手段に過ぎないカラーだのカットだの縮毛強制などのメニューを売り込む。

 

これを本末転倒と言います。あるいは、手段と目的のはき違えとも。

だから、メニューそのものの価値を生まない。価値を生まないから値下げで訴求するしかなくなります。

だってそうですよね、お客様の悩みを理解せず、いきなりメニューを売り込んだって、なんの価値も生み出すことなく、かえって迷惑ともなりかねませんから。

 

そこで、問題点を明らかにするためにカウンセリングがあるのです。

唯一にして絶対の営業機会がこのカウンセリングです。それに気づかずに、いきなり「今日はどうしましょう?」とやってしまうのですね。

 

そうではなく、カウンセリングによって問題点を明らかにし、それを解決すること。できるだけ解決するような姿勢で臨むこと。

解決するために、必要となるメニューや施術工程を提示し、あるいはホームケアのための店販品を推奨販売する。

けっしてこの順番を間違えてはなりません。

お客様のお悩みを明らかにして解決策を提示すること。これ以外で美容室の価値の向上はあり得ないのです。

 

 お金の流れを知る

 

【経営の原理原則】その②

「会社は借金では潰れない。資金が回らなくなって潰れる」

 

借金返済をする原資は税引後の利益。

だから会社を維持しようとするなら、粗利、固定費(人件費)、人件費以外の固定費、税引前利益、税引き後利益、繰越金という6つの項目に注力し、経費のコントロールをしながら必要な支払いができるよう、つまりキャッシュフロー経営に徹することです。(下の図)

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キャッシュフローを理解する

 

このように会社の中のお金の流れを知ることがとても重要。

どこの経費をコントロールするか、あるいは売上をどれだけ伸ばせば望む利益を得られるのか、この図を見ればたちまち理解できます。

 

私のクライアントさんはこの図をもとに、どの部分をどうやって経費コントロールしたらよいのかを理解して実践。結果は、望む利益を2倍、3倍にしています。

 

 【経営の原理原則】その③

「緊急時には経費の削減。次に売上を伸ばす方策を考える」

 

②のキャッシュフロー経営の続き。

会社の利益を増やすには、経費を削減するか、売上を伸ばすかの2通りしかありません。

 

ところが緊急時には、経費削減が先。この順番を間違えてはなりません。

 

経営危機に陥っているにもかかわらず、アホなコンサルなどは、「気合を入れて売上を伸ばしましょう」「もっと集客に予算をかけて新規客を呼び込みましょう」「マーケティングを行って新しいメニューを導入しましょう」などとアドバイスをしますが、その間に会社は潰れてしまいます。

 

お金の流れのわからないコンサルの指導を受けていたら悲劇でしかありません。

 

  信頼貯金

 

【経営の原理原則】その④

「利益は顧客の満足の値」

 

売上の多い少ないは関係ありません。

料金の高い低いも関係ない。

利益がいくら残るか。それはお客様の満足の値なのです。

 

 【経営の原理原則】その⑤

「ブランドとは信頼の貯金箱。貯めるのは大変だが、失うのは一瞬で足りる」

 

ブランドとは、競合との圧倒的差別化、顧客ロイヤリティによる長期的・安定的売上確保、高い利益率といった特有の価値のことで、長い間のコツコツとした「信頼」の積み重ねによって初めて得られるものです。

 

ところが、信頼を失うにはほんの一瞬で足ります。

まさに「貯金」と言われるゆえんです。「信頼貯金」です。

 

まして今日のようにSNSが席巻している時代。ネット上のクチコミの悪評はたちまちウイルスのようにスピードをあげて拡散していきます。

ある調査によれば、宣伝広告を信じる人は17%、クチコミを信じる人は83%に及ぶそうです。

しかも女性のクチコミは男性の3倍も伝達力があり、なかでも人間の心理的特性から、悪い評判こそ拡散力があるというのですね。

 

地域密着の美容室なら受けるダメージは決定打となってしまいます。

えらいこっちゃ、です。

 

悪い評価を受けたらどうするか?

ブランド戦略とは、イケイケドンドンではなくて、その辺を含めて構築する必要があります。

 

 人時生産性を共通言語に

 

【経営の原理原則】その⑥

「人時生産性を業績の評価メジャーにする」

 

さまざまな生産性の指標がありますが、理美容業こそピッタリの相性を持つのが「人時生産性」の評価メジャーです。

 

粗利益額をスタッフ(社長・役員・事務員すべて含む)の総労働時間で割って求めます。

美容室の平均値は2000円と極端に低いのが実情です。

しかも、組織が大きくなればなるほど生産性は低くなるという傾向があります。

 

2000円を、1日9時間労働、月23日勤務、労働分配率(粗利に占める人件費の割合)55%で計算する。2,000円×9時間×23日×55%だから、

 

支給できる給料の限度額は227,700円。

年収にして2,732,400円。

 

だから、あらゆる業種業態で最低ランクに位置されてしまうのです。

その程度の年収しか払えないで、自分の役員報酬の額をSNSで発信して自慢する経営者がいたりしますが、従業員からは恨みを買うのは必定です。お話にならないレベルですね、まったく。

年収自慢をするなんて、どういう原因かわかりませんが、ある種のコンプレックスの裏返しでしょうね。

 

人時生産性を上げるには、粗利を上げる、スタッフ数を減らす、労働時間を減らす。この3つしかありません。それには、売上に直結した仕事、つまり稼働率を上げること。アイドルタイムを削減すること。

こうやって目の付けどころがはっきりすれば、後はどうやって稼働率を上げていくか?

 

私のクライアントさんのA社は、大型店ですが人時生産性は3000円を行ったり来たりといった、割と良好な業績でした。それを、ある改善ポイントを見つけて集中的に取り組んだ結果、わずか数カ月で人時生産性が4000円になったのです。半年後には4500円になって安定しています。

 

そこであなたに質問です。

上記の条件は変わらずに労働分配率55%、1日労働時間9時間、月23日間働くとして、このA社のスタッフにはいくら給料を支給できますか?

 

答え:512,325円

 

もっとも、全額支給しなかったとしても内部留保として資金をプールできますね。

とはいえ、いままで手にしたことのない給料の額を手にしているのは事実で、私はスタッフの喜ぶ顔を目撃しています。

 

こんな話をしても、相も変わらず売上を生産性と同一視している人には、馬の耳に念仏でしょうね。「人時生産性」を業界の共通言語にしたいと20年前からがんばっているのですが、道のりはまだ遠いようです。

 

 【経営の原理原則】その⑦

「集客も採用も同じマーケティング

 

魚のいるところに釣り糸を垂れる。これはマーケティングの鉄則。

しかし現在のようにモノやサービスが供給過剰になると、マーケティングは単純にはいきません。

 

・どんな市場(ニーズ)を選ぶのか(セグメンテーション)

・どんな魚を狙うのか(ターゲティング)

・どんなエサで釣り上げるのか(ポジショニング)

 

というマーケティングSTP戦略を駆使する。

これは集客も人の採用も一緒のことです。

                               ≪つづく≫

 

「ごくわずかの例外を除き、

原則と手順を理解していれば

問題は実務的に解決できる。」

ドラッカー

 

ポジティブ志向の落とし穴

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ポジティブ礼賛の風潮

 

世はポジティブ志向礼賛といった風潮があります。そう、“風潮”なのですから、確かな根拠があって礼賛しているわけではありません。

しかし風潮にしては、人物への評価や物事の価値判断に大きな影響を与えているようです。

私の場合、お恥ずかしいことですが、事業を失敗してからというもの、98%の人が私から去っていきました。

ある人は捨て台詞でこう言いました。「運の悪い人とは付き合わないっていうのが鉄則だから」と。

何が鉄則なのでしょうか。天地自然のなかにそんな鉄則は存在するのでしょうか。

たぶん、自己啓発本などで、運のいい人とだけ付き合え、運の悪い人とは付き合うなと。それを妄信しているのでしょうね。

 

思い込みのムリ

 

自己啓発=ポジティブ志向の先進国と言えばアメリカですから、アメリカ発の自己啓発本は日本で多く翻訳されて出版されています。

自己啓発本を書き、講演までして、それこそ巨万の富を得ている自己啓発家の類は何人もアメリカにはいるのですね。

それらはこぞって運の悪い人、ネガティブな人とは付き合うなと言っているようです。

 

しかし考えてみれば、「運の悪い人を遠ざけよう」とでもしない限り、簡単に崩れてしまうほどポジティブ志向って脆弱なものなのでしょうか。

ここに、思い込みの無理があると思うのですね。

 

周して比せず

 

東洋では、こんなキャパシティの狭い考え方はしません。

たとえば儒教の経典である『論語』にはこうあります。

「君子は周(しゅう)して比(ひ)せず、小人(しょうじん)は比して周せず。」

「君子」とは徳性のある人、人の上に立てる人、リーダーのことを言い、「小人」とは度量や品性にかける人、つまらない人のことを言います。

意味は、「君子は誰とでも広く公平に付き合って、偏った付き合い方はしない。

しかし、小人は、それとは反対に、一部の人とばかり付き合って、広く人と付き合うことをしない。」

だから、君子の付き合い方をしなさいと言うわけです。運の悪い人、ネガティブな人を避けてはいけない、遠ざけてはいけない、広く等しく付き合いなさい、と。

まさに君子、度量の広い考え方ですね。

 

懐が深い東洋の世界観

 

論語』の別のところにはこういう言葉もあります。

「三人行えば、必ず我が師有り。其(そ)の善なる者を択(えら)びて之(これ)に従い、其の善ならざる者にして之を改(あらた)む。」

―三人が行動すれば、そのなかには必ず学ぶべき師がいる。そのよき人を選んで見習い、よくない人を見ては、自分に省(かえり)みて改める。―

 

よくない人とは、尊敬できない人、運の悪い人、ネガティブな人のことですが、その人の言動をよく見て、自分が同じことをしていないか我が身を振り返って反省して改めましょう、と言っていて、さらに、それができれば、そういう人も自分の先生にすることができるとまで言っているのですね。そう、反面教師にしようと言っているのです。

 

「善ならざる者」も先生にすることができる。じつに懐が深いですね。

 

正見そして諦観

 

さらに、ポジティブ志向をしていると、現実を忘れて、とんでもない理想や夢ばかりを追い求めることになり、結果的に不幸に陥ってしまうという例は数え切れないほどあります。

 

東洋ついでに仏教のことを言います。仏教では「正見(しょうけん)」という考え方があります。ありのままを見るということです。

たとえば、お腹が痛くなったならお腹が痛いという事実をありのままに認めるということです。そうすれば、病院に行くなりして必要な措置を講じることができます。

ところがポジティブ志向になると、痛いなんて我慢すればやり過ごせる、たいしたことではない、と考えます。そして、症状は悪化して生命にかかわるほどの取り返しのつかないことになったりします。

 

これが企業経営や政治の世界なら、ポジティブ志向の失敗はとてつもない悲劇となります。今日のような危機的な時代はとくにそうです。

危機管理の鉄則は最悪を想定して手を打つことです。

ところがポジティブ志向になると、まだまだ大丈夫、それよりも気合で乗り切れなんて変な精神論をかざして、そのまま突っ走ってしまう。その結果が、多数の人を巻き込んだ、とりかえしのつかない不幸な事態に追い込まれてしまうのですね。

今回のコロナ禍での政府の対応、コロナ禍による経営環境の変化を教訓としない経営者の無策には、ポジティブを通り越してノー天気と形容したいほどです。

 

さらに仏教ではネガティブ志向の典型ともいうべき「諦観(たいかん)」という考え方もあります。なぜそうなったのか、冷静になって原因を明らかに見るということです。

 

徳川家康にとっての生涯で初めての負け戦と言われる戦いが三方ヶ原の戦いで、武田信玄軍に敗れて敗走した際に、家康はあまりの恐怖から馬上で脱糞したと言い伝えられています。さらに自軍の陣地に命からがら戻ってくると、絵師に銘じてそのままの情けない姿を描かせたといいます。みずからの慢心を戒めるために。

 

これこそ「諦観」です。自らの慢心が招いた敗戦であったと、しっかりと原因が家康にはわかっていたのですね。情けない自らの肖像画を見るたびに慢心とならないように自分自身を戒めていたのでしょう。ここが家康の凡百の武将と決定的に違うところです。

 

陰陽相待性の理論

 

このように、東洋の考え方というよりも世界観は、陰陽で成り立っています。陰もあれば陽もある、陰は陽を待ち、陽は陰を待つという陰陽相待性(西洋のように相対という互いに対立するという世界観ではない)の理論で成り立っているわけです。

 

ポジティブ志向おおいに結構。ただし、ネガティブを排除した志向はどこか危ういし、むしろ身を亡ぼすほどに危険。なぜなら世界は陰陽で成り立っているから。

ネガティブも仲間に入れてバランスよく生きましょう。また、組織も陰陽にのっとって運営していきましょう。

 

それが天地自然、宇宙の理(ことわり)です。

 

「陰陽なるものは、条理なり。

条理なるものは、本義を草木の理において取るなり。」

(三浦梅園)

 

特定の顧客にフォーカスしよう!

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孫さんの事業の原動力

 

なにをするにも漠然とではいけません。フォーカスするべきです。

フォーカスした具体的な思いはビジネス成功の原動力でしょう。

 

あの孫正義さんは、その総資産は2兆円と言われていますが、起業の原動力は「家族の将来は自分が守る」でした。

在日韓国人3世として幼い頃から差別に遭い、父親は彼が中学卒業の年に倒れてしまいます。

大学に入学するなり、毎日1つずつ発明してそれを1年間続けると目標を立て、それを有言実行して、そこで得た資金で会社を設立しました。

 

二股ソケットの開発秘話

 

松下幸之助氏はあるとき街を歩いていると女性の言い争いの声が聞こえてきました。一方は、暗くなったから電気をつけたいといい、もう一方は、アイロンがけが終わってないから駄目だという。

そこで2人同時に使えるソケットはできないか、このような不便を感じている人は多いはず、作ればきっと売れるに違いない。そこで「二股ソケット」を開発し、会社で最初の大ヒット商品になりました。

 

誰の、どんな不便や問題点を解消したいのかと問題設定をフォーカスする。フォーカスした不便や問題点を解消すれば素晴らしい笑顔が返ってくるはずだ。幸せになってくれるに違いない。

 

このように、具体的に、誰の、どんな(どのような)お悩みや問題点を解決するのかとフォーカスする、解決した果てに素晴らしい笑顔が返ってくる、そんなイメージをありありと描けることが成功の原動力です。

 

消費税増税だろうが、新型コロナ感染拡大だろうが、関係ありません。

 

世間のすべての人ではありません、思い浮かべられる具体的な誰々を喜ばす、幸せになってほしい。なぜなら思い浮かべた誰々の向こうには、同じような問題を抱える何百人、何千人、何万人の人がいるからです。

これが「市場」というものです。新しい市場の発見ですね。

 

凡事徹底 やることはひとつ

 

そんな思いのボルテージがはっきりと明暗を分ける時代が今だと思います。

 

凡事徹底。やることは1つです。

具体的に1人2人のお客様をイメージして、あのお客さんをもっと喜ばすことに何ができるだろうか。それを考えて次の来店時に提案する。この繰り返しです。

これを「ペルソナ・マーケティングと言います。

 

たとえ提案がピント外れであったとしても構いません。

「この人は私のためにこんなに考えてくれていたんだ」と深い感動を呼び起こすことは必定です。

これ、客商売の原点です。いまこそ原点に帰るときです。

 

 

「顧客を知るのは顧客ただ一人」

ドラッカー

 

見過ごせない 言葉の表記のミス

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ブランディングが台無し

 

SNSなどの爆発的な定着は、おのずと発信力が求められ、発信力がモノを言う時代となりました。自己あるいは自社のブランディングにとって発信力は必須のスキルとなったようです。

 

そうなると、とても気になることがあるのですね。

その発信力、とくに言葉の乱れです。「言葉の乱れは心の乱れ」とよく言いますが、ここ数日のFBを中心にしたSNSで見つけたものに限ってなのですが、表記の単純な間違いにとても目に付きました。

これじゃ、どんなに立派なことを発信していても、残念なことに、発信者の人格や程度が知れてしまうんですね。

そう、自己ブランディングや自社ブランディングどころか、まったくのマイナス作用しか及ぼしません。

 

余計なことかもしれませんが、言葉で飯を食っている私としては、どうしても見逃せないのです。許せ。

 

ここ数日で目にした間違い

 

✕以外に→〇意外に

例)見た目よりも意外にあの人、いい人だよ。

 

✕事→〇こと

例)(形式名詞の場合は平仮名で書く)驚いたことに、彼女のことが好き、~することにしている、~と言うことにした、見たこともない。

  (生じた事柄、事態)考え事、心配事、事が事だけに、事と次第では、事始め。

 

✕返って→〇却って

例)こんな渋滞じゃ、却って歩いたほうが早い。

 

✕合った→〇遭った

例)ひどい目に遭った。

 

✕答える→〇応える

例)期待に応える。

 

✕出合う→〇出会う

例)モノやコトに「出合う」。

  人に「出会う」。

 

✕子供→〇子どもorこども

理由)世界こども人権宣言により、こどもは独立した一個の人格であり、仏壇の供え物でもなければ親の従属物でもないという考えは無視できません。「子供」の表記はけっして間違いではないのですが、「子ども」あるいは「こども」の表記が無難です。

 

✕辞める→〇やめる

例)(会社・役職を辞める)職を辞める。

    (たばこをやめる、無駄な出費をやめる)~をやめる。

 

✕手当→〇手当て

例)(治療・対策など)傷の手当て、在庫の手当て

  (金銭)通勤手当、出張手当

 

✕初め→〇始め

例)~さんを始め~さんにも大変世話になった。

  (主として時間に関連する名詞に使用する場合)年の初め、初めからやり直す。

 

図る・計る・測る・量る

例)[意図・企画]解決を図る、合理化を図る。

    [計算・計画]時間を計る、国の将来を計る。

    [測定・測量・推測]距離を測る、人物の力量を測る。

    [軽量・推量]推し量る、体重を量る。

 

断つ・絶つ・断つ・経つ・立つ・建つ・発つ

例)[打ち切る・分断する・遮る]国交を断つ、酒を断つ、雑念を断つ。

    [絶える・絶やす・途中で切れる・やめる]後を絶たない、消息を絶つ、連絡を絶つ、夢を絶たれる。

  [裁断]裁ちばさみ、裁ち縫い。

  [時間の経過]あれから3年が経つ。

  [一般用語]演壇に立つ、思い立つ、顔が立つ、煮え立つ、腹が立つ。

  [主に建築]家が建つ。

  [出発]家を発つ、東京を発つ。

 

✕身に付ける→〇身に着ける

例)経営知識を身に着ける、技術を身に着ける。

 

・・・・と、キリがないのでこの辺でやめておきます。

 

簡単な手引書を紹介 

 

個人的には、「事」の乱用が目に付きます。どんな新聞も雑誌も(業界誌はレベルが低いのでその限りではない)「こと」と平仮名を使っています。これを「事」と表記したら、特にお客様は違和感を感じると思います。

 

これらの例に挙げたのは単純な表記の間違い。

これ以外に、敬語の間違い、「てにをは」の間違い、日本語としての間違いといった、発信者自身を貶めるような表現が散見されます。

日本語講座なんてやりましょうかね。

いやいや、“やりましゅうかね”なんてのんびりしたことを言ってないで、それは急務だと思います。

 

ちなみに、「あれ、この場合、どういう言葉の使い方がいいのかな」と迷ったら、おススメなのが『朝日新聞の用語の手引き』(朝日新聞社)または『記者ハンドブック』(共同通信社)です。

【改訂新版】朝日新聞の用語の手引

 

記者ハンドブック 第13版 新聞用字用語集

 

「言葉は誤解のもとだ。」

サン=テグジュペリ

 

枕上・馬上・厠上の三上磨練

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寸陰を惜しむ

 

私淑する東洋思想の泰斗(たいと)・安岡正篤師によると、「寸陰を惜しむ」として、その惜しむ時間と場所は3つあると指摘されています。

 

寸陰とは、わずかの時間のことで、その寸陰を惜しむ。

現代人は超多忙ですが、多忙であっても寸陰を惜しんでこれを練磨すると、とてつもない想像力や発想力など、理屈ではとらえられない不思議な力が発揮できるというわけです。

練磨とは、練って鍛え磨くこと、です。

 

安岡師はこう述べています。

「どんな忙人にでも、寸陰というものはある。精神を集中し、寸陰を積んでこれを練磨すると、非常な感覚力を生ずる」と。

 

たとえば、日頃からなにかの問題意識をかかえた人が本屋さんに立ち寄ってみる。何万冊、何十万冊もある本屋さんの棚から、特定の本が目前に立ち現れてくる。まるで、「あなたが読むべき本はこれだよ」と訴えかけでもするように。

多かれ少なかれ、こういった経験は誰でもされていると思います。

理屈ではない、こういう不思議な体験は日頃からどれだけ問題意識をもって生きているか、つまり、どれだけ忙しくても精神を練磨して生きているか、が前提となります。

 

精神を磨練する

 

そこで、安岡氏が指摘する精神を練磨する3つの時間と場所を挙げていて、これを「三上磨練」と言いますが、その3つとは以下の通りです。

 

  • 枕上磨練
  • 馬上磨練
  • 厠上磨練

 

 

[枕上(ちんじょう)磨練]

寝る前の寸陰を惜しむことです。部屋を暗くして枕元の電気スタンドを点け布団にもぐりこんだ。今日の一日を反省しながら、明日への準備を心の中でする。思いついたことがあれば、あらかじめ用意したメモ用紙に書き入れる。

 

私の友人でこれを習慣づけた人がいました。思いついたことをメモする。やがて眠りについた後も、はっと起きて浮かんだアイデアをメモしていく。

こうやってひらめいた事業アイデアを実践し検証しつつ自身の始めた事業を大発展させ、今では東証一部上場企業にまで上り詰めました。

 

誰ですか、眠くなるまでスマホをいじって、そのまま寝落ちしていたなんていうことではいけませんよ。

 

 

[馬上磨練]

現代なら通勤電車での車上、あるいは移動のための徒歩で寸陰を惜しむということですね。

満員電車の苦痛で考える余裕はなく、運よく座れたとしても寝落ちするというパターンでは磨練とはなりません。

余程のことがないかぎり、安全に確実に体を運んでくれるわけで、すっきりとした貴重な朝の時間を練磨の時間にあてる。

あるいは、何気に見上げた中刷り広告に、見事なキャッチコピーが見つかるかもしれない。運良く座れれば本を開く。

また、徒歩での通勤途上にさまざまな発見に出くわすかもしれません。

 

こういう寸陰をいかに惜しんで過ごすか。その積み重ねは、大きな違いとなって表れてきます。

あの二宮尊徳の有名な像は「負薪読書」です。薪を背負いながらも勉強する姿こそまさに馬上磨練です。

尊徳といえば、奉公先で夜遅くまで読書をしていたのを、油がもったいないからと咎められ、それではと自らが菜種を植え、できた菜種と油を交換して灯りにしたという話もあります。

 

尊徳の残した有名な言葉が「積小為大」。小を積めば、即ち大と為(な)る。「小さいことが積み重なって大きなことになる。だから、大きなことを成し遂げようと思うなら、小さいことをおろそかにしてはいけない。」

まさに寸陰を惜しむ積み重ねがあれだけの偉大な農政改革をやり遂げたのでしょうね。

 

 

[厠上磨練]

最後に厠上(しじょう)磨練です。

厠(かわや)とは昔の言い方で今のトイレのことです。トイレで寸陰を惜しんで磨練をする。

トイレは狭い密閉された空間ですから、容易に日常を断ち切ることができます。すると、新たな発想がわいてきます。ここでもメモを活用するといいかもしれません。

 

ひとつのエピソードをご紹介します。

ある大手の出版社で女性誌を創刊することになりました。どんな雑誌の題号(タイトル)が相応しいか、喧々諤々(けんけんがくがく)の議論を重ねますが、いずれも帯に短し襷に長しで、決定的な題号とはなりません。

 

そこで休憩となりました。

晴れて新雑誌の編集長となる男性がトイレに入って、おのれのイチモツをつまんで見た。「これだ!」とインスピレーションが働いて、その題号は「女性自身」と決まった。

 

別のエピソードもあって、その日の朝刊を見ながら大便をしていた。ふと目に留まった広告のコピーに「女性自身」の文字を見つけた。「これだ!」とインスピレーションが働いて決まった。

 

どちらが本当なのか知りません。でも、発想がひらめいた場所はトイレであることは同じです。

つまり厠上磨練。

誰ですか、ここでもスマホの持ち込みですか? もったいないですよ。

 

 

このように寸陰を惜しんで練磨する習慣をつけることです。

 

古今東西、偉大な発想、発見のきっかけ、インスピレーションなど、理屈を超えた不思議な出来事はよくあることです。そんな歴史的な出来事にまで至ってしまうほどの発端のきっかけを称して、「歴史は夜つくられる」と言ったりしますが、これでは閨上磨練。閨(けい)とはちなみに寝室のことです。特に男女の寝室での交わりによって歴史はつくられてしまうといったことを言い表してます。

そうではなく、同じ理屈を超えることに違いはありませんが、正確には、歴史は「枕・馬・厠の三上を磨練」することによってつくられるといったほうがスマートですっきりしますね。

 

「凡と非凡のわかれる所は能力の如何(いかん)ではない。

精神であり感激の問題だ。」

安岡正篤

 

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初出掲載:2020 年3 月19 日