Suzu Masa ブログ

辛酸なめた男が美容室「経営」をリアル・ガチで語る

【経営の原理原則】シリーズ㉛~㉝

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イノベーションの絶好の機会

 

【経営の原理原則】その㉛ 

「大きな変化はイノベーションの絶好の機会」

 

どんな仕事も、どのような産業も、未来へ向けて持続・発展していけるという目算が立つのであれば、イノベーションは起こりようがありません。

イノベーションは、現状のままでは未来へと発展はおろか持続できない、そんな不透明感やら閉塞感、危機感が前提になければ起こりようがないのです。

 

そういった意味で現在は、イノベーションの機会に充ち満ちていると言えるでしょうね。

 

ここで念のため、イノベーションとは何か、を定義したいと思います。

イノベーションを表立って取り上げた最初の人は経済学者のシュンペーターで、「創造的破壊」と定義しました。

 

そしてもうひとり、われらがドラッカーイノベーションとは、新たな価値の創造によって市場や社会に変革をもたらすこと」であるとしています。

 

現在、イノベーションという言葉は一種の流行のように頻繁に語られていますが、私の見聞した限り、そのほとんどが既存事業の改革や修正レベルの新規事業であったり、サービスのシステム上の改変であったりで、“創造的破壊”であるとか“市場や社会の変革”であるとかといったレベルからは程遠いものばかりです。これではイノベーションとは言えません。

 

創造的破壊をするほどの、社会の価値観を根本から変えてしまうほどの、イノベーションを起こす機会は、今を措いて他にないと言えるでしょう。

なぜなら、何度も申し上げているように、今はパラダイムの大転換期にあるからです。VUCAの時代と言われている現在、現状のコロナ禍が、イノベーションのきっかけを与えてくれていると思うからです。

 

ここにおいてドラッカーは、手厳しい次の言葉を投げかけるのです。

「これほどにイノベーションが要求されている時代に、イノベーションができないのであれば、たとえそれが今は立派な会社であっても、衰退し絶滅するように運命づけられている。そのような時代にイノベーションをマネジメントできない経営者は、無能であり、そのタスクにふさわしくない。」

 

イノベーションを起こそうとしない経営者は、経営者失格だとまで言っているわけですね。

 

そして2500年前の『論語』にはこうあります。

 

「忮(そこな)わず求めず、何を用(もっ)てか臧(よ)からざらん。子路、終身これを誦(しょう)す。子の曰く、是(こ)の道や、何ぞ以(もっ)て臧しとするに足らん。」

 

▷「害を与えず求めもしなければ、よからぬことなど起こるはずがない」

(孔子の高弟である)子路は生涯のモットーとしていた。しかし、孔子は言った。

「そうした方法では、どうして良いと言えようか」

 

これからも波風立てることなく予定調和で生きていくこと。まるで既存の事業のビジネスモデルのまま将来にわたってやっていきたいと同じ意味のことを子路は信条としていたのですが、先生である孔子は、けっして良いことではない、「なんぞもって」と強く否定しているのですね。

 

たとえば今のコロナ禍の現状は誰も想像していなかった事態です。そんな危機に直面した際に、この現実を直視し、これからどう対応していけばいいのかをシミュレーションし、新たなビジネスチャンスをつかむことができないかと思考回路を開くことができる「君子」こそが、イノベーションを起こすことができるのです。

 

ところが、反対に「小人」は、現実から目を逸(そ)らし、また良い時代はやってくるとの根拠のない楽観をいだいて、現実をごまかす。これではイノベーションどころか、組織を破滅へと導くことでしょう。

 

経営者よ、「君子」たれ、ですね。

 

キャリアパスとリンク

 

【経営の原理原則】その㉜

「育成はキャリアパスとリンクさせる」

 

スタッフ本人のキャリアパス、つまり〇年後にはスタイリストデビュー、〇年後には店長、さらに〇年後には独立・・・あるいは、会社に残って教育や採用、集客などの専門部署の人材として活躍したい、いやいや、会社の役員としてマネジメントに従事したい・・・あるいは女性の場合には、出産・子育てから復職できるポストを保障してほしい、などといったような個々のスタッフ本人が将来に描くキャリア。

 

もっと大きく言えば、人生の「夢」や「ビジョン」です。

 

そんな夢やビジョン実現のためのポストをお店の側で用意してあげること。

たとえば独立。

完全に今までの会社を退職して自分で思う通りのお店を開業するとしましょう。それも確かにキャリアパスの最終形、つまり自己実現としておおいに賞賛したいのですが、なかなか今の時代、過当競争とコロナ禍などの経営環境の悪化のなか、独立するのは難しいし、独立できたとしても存続するのは困難なことです。

 

だとしたなら、リスクを100%負う独立ではなくて、のれん分けやVC(ボランタリーチェーン)、分社化など、今まで勤めていた会社と緩やかな連帯を持っての独立とする。こうすれば、人の採用・育成、材料仕入、集客など、さまざまな店舗運営のノウハウを共有できるのですから。

 

独立したのはいいとして、にっちもさっちもいかなくなって、どこかのFCの傘下に収まるよりもよほどいい選択だと思います。

 

こういうふうに、スタッフ個人個人の夢、ビジョンに共感して、その実現のためにポストを用意しておく。

 

これが最強の人心掌握術であり、マインドセットの重要な手法でもあるのです。

 

「徳治」を行う「君子」たれ

 

もちろん、会社があってこそのスタッフの夢実現です。

スタッフのキャリアパスプランとリンクさせることによって、スタッフの高いレベルでのマインドセットが可能となるのですが、同時に会社も、新たな業態開発のアイデアが得られ、ひいては新規事業の実現となって、強力な事業推進のエンジンを手にすることにもなるのです。

 

たとえば、独立希望はさきほど申し上げたようにノレン分けや分社化という組織の新たな発展の形態につながり、出産・育児でのリタイアからの復帰希望は、カラー専門店や主婦が稼働する専門店などの新規事業の業態化につながり、あるいは高齢者対象の福祉美容という新分野への参入へ、または個人の適性を活かしてネイル専門店やエステ専門店などの開設へ、あるいはオンラインでの物販サイトの立ち上げや商品開発などの新分野への挑戦・・・といったようにスタッフのキャリアパスとリンクさせることが、新たな事業分野の創出へとつながるのです。

 

つまり、こういうことです。

個人の夢実現が組織の夢実現と結合する、ということ。

だから、組織は強くなる、そこで働くスタッフの意識は高くなる。究極の繁盛方程式です。

 

こういう実例は、じつは多くあります。

 

論語』にこういう言葉がありますよね。

「君子は人の美を成し、人の悪を成さず。」

 

つまり、君子は、人のよいところをほめ、さらに伸びるように導き、欠点があれば、その欠点がそれ以上悪くならないように教え導くのです。

 

人によって持っている能力はさまざまです。それぞれの持ち味を的確に見つけて伸ばそうとします。欠点については目立たないようにフォローしていく。そして適材適所に人を配して自分の強みとなるキャリアを形成していく。

こういったことをマネジメントできる人が「徳」のある人物です。

 

さらに「徳」によって組織を統制=マネジメントすることを「徳治」と言います。

「徳治」を行うリーダーが「君子」というわけです。

 

そして、ドラッカーの言葉も紹介しましょう。

「産業が衰退する最初の兆候は、能力と意欲のある者に訴える力を持たなくなることである。」

 

能力と意欲のある者を見抜く眼力が必要です。

君子の役割は重要です。そんな君子がいなくなると、会社はもちろんのこと、業界そのものが地盤沈下してしまうとドラッカーは言うのですね。

 

ぜひ業界に君子出でよ!・・・ですね。

そろそろ君子の養成塾なんて始めようかなって思っています。

 

「率」で判断する落とし穴

 

【経営の原理原則】その㉝

「粗利益『率』ではなく『額』で見る」

 

美容室の財務の特徴として高い粗利益率が挙げられます。だいたい売上に対して90%程度(業務委託を外注費として計上しているところは別)もあります。

あらゆる業種業態のなかで、上位の粗利益率の高さです。

そして、人件費率は56%です。

 

事情のわからない他業界の人は、粗利益率の高さを聞いて、“儲かっていいですね”と反応を示します。

人件費率は56%も支給すると聞いて、“従業員さんは恵まれていますね”と反応を示します。

 

でも、なぜか儲からない?

スタッフの給料の額も低い?

 

どうしてなのか?

それは、「率」で見ていて「額」で見ていないから。

率は高くても額が低い。

その原因は、ひとえに大元となっている売上が低いから、です。

 

「率」ではなくて「額」で判断してみましょう。

TKCのデータでは、儲かっているところであっても経常利益率は5%台が平均ですから、大元の売上が低いところは借入金の返済にも事欠く有り様です。売上が多くてその割に借入の少ないところは余裕で返済できます。

 

売上が低いままですから、いくら人件費率が高くても、従業員に支給される年収額は、残念ながら全業種で最低ラインに近いレベルです。

 

粗利益率や人件費率は高くても額が低いという現実に真っ直ぐに目を向けて、売上をいかに増やすか、経費をいかに削減するか。特に、粗利益額の増加、労働分配率(粗利益に対する人件費の割合)の低減、ムダな経費がないか、削れるものは徹底して削ることに取り組むべきです。

 

そして、労働分配率は低くても、スタッフに支給できる給料の総額を多くする。これが経営者の知恵です。

 

「あらゆる者が、強みによって報酬を手にする。弱みによってではない。したがって、常に問うべきは、『われわれの強みは何か』である。」(ドラッカー

 

ということで、もう一度、前の32の投稿とあわせお読みください。

 

「人生のなかで私が一番好きなもの。それはお金のかからない、誰もが持っている、最も貴重なものだ。そう、時間だよ。」

スティーブ・ジョブズ

 

【経営の原理原則】シリーズ㉖~㉚

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企業活動のすべてを統合する

 

【経営の原理原則】その㉖

マーケティングとは経営の全体のことである」

 

マーケティングは、販売よりもはるかに大きな活動である。

それは専門化されるべき活動ではなく、全事業にかかる活動である。」(ドラッカー)

 

マーケティングとは、顧客の視点から見た、顧客への価値を高める企業活動のすべてを言います。それは事業全体と言ってもいいし、全社を挙げて活動する必要のあるものです。

マーケティングという言葉の定義を組織全体が理解し、組織を挙げて実践していく必要があります。

 

マーケティングとは、いたずらに顧客に迎合することではありません。それよりも、「自分たちは何をすべきか」というところから、すべてはスタートする。これが事業の目的となり、目的を達成するためのあらゆる企業の活動がマーケティングのもとに統合されるのです。けっして企業活動の単なる1分野にしてはならないのです。

 

「君子は義に喩(さと)り、小人は利に喩る。」(論語

▷君子は「義」すなわち「何をなすべきか」をまず考える。小人は「利」すなわち「何をしたら得か」をまず考える。

 

 販売なんていらない!

 

【経営の原理原則】その㉗

「どんなに素晴らしい技術、製品、サービスの中身であっても、マーケティングを十全に機能させなければ売れていかない」

 

マーケティングの目的は、販売を無用にすることである。マーケティングの目的は、顧客を深く理解し、製品やサービスが顧客に適合して、勝手に売れるようにすることである。」(ドラッカー)

 

有名なドラッカーによるマーケティングの定義です。「販売を無用とする」のがマーケティングであると。販売なんていらないーー、すごい言葉です。黙っていても勝手に売れていく、あるいは集客へのコストを一切使うことなく、勝手にお客様がやってくる。

 

あくまでもこれは理想なんだとして神棚に上げておいたままではいけません。

ドラッカーの言うマーケティングとは、社会で何が求められ、社会の中で自分たちは何ができるのかを、まずは知るということです。

知れば今度は、自分たちができるところを一点集中でブラッシュアップしていく

こうすれば、宣伝広告費は一切不要となると。

(まったく宣伝することなく、ホームページでさえ開設していなくて、営業時間7時間、土日休み、紹介がなければ新規客お断り、人時生産性1万5000円、スタッフ1人平均165万円売り上げる美容室があります。まさに販売を無用としている好例です)

 

「人を知る者は智なり、自ら知る者は明なり。」(老子)

 

▷他人のことがわかる者は智者であり、自分のことがわかる者は明者である。人はちょっとした観察眼があれば、他人のことはよくわかるものかもしれない。しかし、自分のことになると途端にわからなくなる。それくらい自分のことはわからないものだ。

 

だから、何度も言いますが、上位20%の上位客に素直に聞いてみることです。なぜ当店に通い続けていただいているのかと。それらの意見のボリュームゾーンが、あなたのお店の最大のお客を惹きつけてやまない魅力、独自性というものなのです。

それが見つかったら、あとはマーケティングの機能をフル稼働させていくだけ。

 

以上、どんなに素晴らしい技術、製品、サービスの中身であっても、マーケティングを十全に機能させなければ売れていかないのです。

 

即断即決の危うさ

 

【経営の新常識】その㉘

「良いモノが売れるとは限らない」

 

良いモノが必ずしも売れるとは限りません。

お客様を中心に考え、「お客様が欲しいモノが売れる」のです。

ここにマーケティングの重要性と真実があります。

 

これを端的に言い表した格言があります。

「私はイチゴクリームが大好物だが、魚はどういうわけかミミズが大好物だ。だから魚釣りをする場合、自分のことは考えず、魚の好物のことを考える。」(デール・カーネギー)

 

魚を釣るのにイチゴクリームをエサにしても釣ることはできません。わかりきっていることですが、意外にこれができません。ビジネスをやっていると、イチゴクリームで魚を釣ろうとしている人がたくさんいるからです。

自分が欲しいものをつくっても、あるいはサービスのメニュー化をしても、お客様が買ってくれるわけがなく、お客様が欲しいものでなくてはダメだということです。

 

さらに、こんな格言もあります。

「“良いモノは売れる”という考え方は、自分を中心に世界が回っていると考える『天動説』と同じ。」(正垣泰彦:サイゼリヤ創業者)

 

職人肌の理美容業界に存在する特有の考え方でもありますが、自分が良いモノと認めたものが売れると考えるのは、正垣氏が言われるように天動説のような、つまり自分中心に世界が回っていると言っているのと一緒です。

お客様中心に物事を考え、「お客様が欲しいものが売れる」と考えないといけません。当たり前のことですが、これができていないところが大半です。

 

そんな間違いを事前に防ぐ方法が、テストマーケティングです。(テストマーケティングのやり方がわからないという方はご一報ください)

 

さて、何事も温故知新です。故(ふる)きを温(たず)ねて新しきを知る。

中国・明の時代に著された『呻吟語』にこういう一文があります。(この書は、生きる指針を学ぶために必読の書として、特に混迷を極める現代人に読んでほしいと思います。)

 

「利を興すには太(はなは)だ急なることなかれ。左視右眄(さしうべん)せんことを要す。」

 

▷新しい事業を始めるときには、いくらスピードが大事とは言っても、あまり急ぎすぎてはならない。しっかりと周りの状況(市場調査や競合他社の動向)を見極めてからとりかかることが大切である。

 

私が出合ったケースでこういうのがあります。その経営者は有名な自己啓発本に心酔していて、その本には“即断即決”が成功への道と記されているらしいのですね。そこで飛び込んできた儲け話に即断即決で数千万円の投資をしました。私は大反対したのですが、聞き入れることはなく、結局、投資金は回収されず水の泡となってしまったのです。

 

結局は経営者次第

 

【経営の原理原則】その㉙

「マネジメントは経営者の“人となり”」

 

「マネジメントは常に、組織――つまり、人間関係の網の目――のなかで行わなければならない。経営者がそれゆえ、常に模範となり、その行いは大切である。しかし同様に大切なことは、その人となりである‥‥。」(ドラッカー)

 

マネジメントは人が行うもの。だから、経営者の人間力こそがモノを言うのですね。

このシリーズの10回目「組織は経営者の器以上に大きくなれない?」で述べた「人間力」のことです。

 

この人間力のことを『論語』では「徳」と表現しています。

 

「子の曰く、政(せい)を為(な)すに徳を以(もっ)てすれば、譬(たと)えば北辰(ほくしん)の其(そ)の所に居て、衆星(しゅうせい)のこれに共(きょう)するがごとし。」

 

▷先生(孔子)が言われた、「政治をするのに徳をもってすれば、ちょうど北極星がその場にいるだけで、多くの星がその方向に向かって挨拶をするようだ」と。

 

 

「徳」によって国や組織を治める。これを「徳治」と言います。徳治によってしか、組織はまとまらないし維持できないと『論語』では訴えかけているのですね。

2500年の時を超えて、ドラッカーも同じことを訴えているわけです。

「徳を持った君子でしか組織を運営できない」と。

おおいに徳性を磨きたいと思います。

 

そして、徳治を行うリーダーのもとには、すばらしい人材が集まってきます。同じく『論語』の次の言葉のように。

 

「徳は弧(こ)ならず。必ず隣(となり)あり。」

 

▷徳のある人は孤立することはない。なぜなら、必ず人材が徳のあるリーダーを慕って集まってくるから。

その通り、なんの将来への保障などなくても、孔子のもとには4000人の弟子が集まってきたのです。その求心力は孔子の「徳」だったのです。

 

こういう時代だからこそなおのこと、どのような組織であっても、徳治を行うリーダー、つまり「君子」が求められているわけです。

私利私欲丸出しの経営者ついていく人は打算だけ。スタッフは容易に本性を見抜きます。

 

どうやれば君子となれるのか、一緒に勉強しましょう!

 

利益はあくまでも結果

 

【経営の原理原則】その㉚

「利益は目的ではない」

 

利益の重要性は言うまでもありませんが、事業の目的は利益を上げることではありません。

もちろん、こんなご時世です。利益が出なければ会社は存続することができず、今はその存続できるかどうかが最大かつ喫緊の課題であることは否定しません。

だからといって企業の目的を、利益を出すこととイコールであっていいはずがないのです。

 

その理由を述べる前に、いつものドラッカーの言葉を掲げます。イノベーションの成功例としてマークス・アンド・スペンサー社を取り上げてドラッカーはこのように述べています。

「では、利益目標はどうなのか。その答えは、そのようなものは存在したことがなかった、である。利益の達成目標は、マークス・アンド・スペンサー社では禁句であった。明らかに同社は、利益性が非常に高く、非常に利益意識が高い。だが同社は、利益を目標ではなく、事業の必要要件として、つまり達成目標としてではなく、要件と見ている。利益は、マークス・アンド・スペンサー社の見解では、事業活動の目的よりむしろ、正しいことを行った結果である。」

 

さらに別の書では、「事業の目標として利益のみを強調することは、事業の存続を危うくするところまでマネジメントを誤らせる」と述べています。

 

そして、今を去ること2500年前の『論語』にも、こうしたためられているのです。

 

「君子は義に喩(さと)り、小人は利に喩る。」

 

▷君子は「義」つまり「何をなすべきか」をまず考える。一方、小人は「利」つまり「何をしたら得か」をまず考える。

 

論語』では、別のところでこうも述べられています。

 

「利に放(よ)りて行なえば、怨み多し。」

 

▷目先の利益ばかりを考えて行動していると、いたずらに周りに敵をつくり、怨みを買うことが多くなる。

 

こういう時代です、あくまでも事業活動の「条件」あるいは「結果」であるはずの「利益」を「目的」や「目標」とはき違えないでください。

私たちは何のために存在するのか? その答えが企業の存在理由であり、目的を果たすことが使命となります。

 

そして企業の存在理由は、「環境、使命、強みについての前提が、それぞれの現実に合致していなければならない」(ドラッカー)のです。つまり、「現実」=「市場」ということで、勝手な思い込み、独りよがりでは、これまたいけないということです。

 

2500年の時を超えた二人の巨人、孔子ドラッカーも希求していることは、「君子」によるマネジメントなのですね。

 

「君子」による「徳治」こそ、あらゆる時代を超えて求められているのですが、ことに理美容業界のようにたくさんの企業数があれば、その数だけ君子が求められているのです。

また、たくさんの君子が輩出できれば、それだけ個々の企業の力であり、業界の力であり、ひいては国の力となります。

これが2500年の時を超えて、孔子ドラッカーが生涯を賭して訴えかけたことなのです。

 

今回の【原理原則】シリーズは、いちはやくFacebookに連続投稿している記事が元ネタになっています。この㉚の投稿をしたところ、ある方から「企業目的は理念をもとにビジョンを実現すること。そのためのガソリンが利益」とコメントをいただきました。

確かにその通り、いわば教科書通りのコメントなのですが、組織を動かすのは「人」であること、しかもその人は、リーダーである「君子」が求められているという重要な視点、これを忘れてはなりません。

 

ところで、頻繁に『論語』のことを話題に出しているせいか、こんなお訪ねをいただきました。論語のわかりやすい入門書はないですか、と。そこでご紹介したいのが安岡定子著『自分を支える「論語」の言葉50』です。論語のなかの厳選された50の言葉からにじみ出る、ズシリと重く響く人生の格言をお聞きください。

 

自分を支える「論語」の言葉50―20代で読んでおきたい「一生の教科書」

 

論語はけっして古臭くて神棚に上げておくような書ではなく、それどころか2500年経った今の時代にあっても、真剣に向き合えば、刺激的で挑戦的、魂を揺さぶってやまない感動の書であることは間違いありません。

 

以下に引用した論語の文章にある「習う」という文字。大抵は、“おさらいをする”なんて訳されていますけど、それでは孔子の考えを浅くとらえすぎでしょう。私はこのようにとらえています。

 

「学びて時にこれを習う、亦(ま)た説(よろこ)ばしからずや。」(論語)

▷学んでは時々現実にフィードバックしてPDCAを回す。いかにも心嬉しいことだ。なぜなら、学んだことを実践で活かすことによって初めて具体的な成果が出るからだ。(学びは実践で活かさなければなんの意味もない)

 

【経営の原理原則】シリーズ⑲~㉕

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土俵は自分で用意する

 

【経営の原理原則】その⑲

「同じ土俵で戦わない」

 

資本力も違えば店舗規模も違います。にもかかわらず、客層、メニュー構成、料金設定、営業時間といった同じ土俵で戦おうとする。

だから、負けるのです。

 

こんな格言があります。

「美しい女性を口説こうと思ったとき、ライバルの男がバラの花を10本贈ったら、君は15本贈るかい? そう思った時点で君の負けだ。ライバルが何をしようと関係ない。その女性が本当に何を望んでいるのかを見極めることが重要なんだ。」(ステーブ・ジョブズ

 

もちろんここで言う「バラ」とは同じ土俵ということ。

15本のバラを贈るということは、同じ土俵で戦って、少しでも顧客の気を惹くために料金のダンピングや過剰な特典を付与するということ。

 

・・・だから、

あなたのお客様とは誰ですか? 勝手に競合と位置付けている巨大チェーン店のお客様と一緒ですか?

一緒でないとしたら、あなたのお客様は誰で、そのお客様は何を望んでいるのですか?

あなたの得意とする、また、それを望んでいるお客様が存在する市場で戦うこと。

つまり、戦う土俵は自分で用意せよ、ということ。

それが、同じ土俵(市場)で戦わないことの極意なのです。

 

魅力の店舗 3つの要件

 

【経営の原理原則】その⑳

顧客満足より顧客感動

 顧客感動より顧客感謝」

 

顧客満足とは、価値>価格のこと。

このレベルのお店は増えました。事実、顧客満足度のアンケートを取れば、5段階評価の4レベルが多いはずです。

 

ただし、これは絶対の評価ではないのはもちろんのことなのです。他のライバル店でそれ以上の満足を得られると知れば、あなたのお店から離脱してしまう可能性は否定できません。

(ちなみに満足度調査ではなく不満足度調査を行うと、より正確な声が聞かれる。不満足度調査とは、不満から聞き出す、しかも7段階評価で、というのがコツ)

 

だから、満足レベルではなく「感動」なのです。

感動とは、感情が動くと書きます。感情を動かすにはある種のサプライズが必要です。誕生日や記念日に何かのプレゼントを差し上げるといったことです。

プレゼントをオトリにして来店を促すのではサプライズになりません。かえって、お店の側の腹の底がわかってしまって嫌なもの。

そこで、手ぶらで来ていただけるようなお祝いを準備すること。たとえば、生花やヘアケア商品など施術を受けなくても渡せるものを用意することですね。

 

そして、さらに「感謝」です。

お客様に対して、きめの細かい気遣いをすることです。店舗がお客様を惹きつけて離さない3つの要点があります。

 

  • 情報力
  • 企画力
  • 提案力

 

の3つです。それらをミックスしてお客様に提案してみる。

何を?

お客様のライフステージがもっと生き生きするような施術メニューの提案のことです。こんなふうに。

 

「いつも当店をご利用いただきましてありがとうございます。今されているスタイルで大変お似合いなのはもちろんなのですが、じつは私たち全員で話し合ってみたんですね。そこで〇〇さんにぜひ提案してみたいなっていうスタイルを考えたんです。〇〇さんらしく、でもこの辺でちょっとイメージの冒険をしていただいて、〇〇さんがもっと引き立つスタイルをと。聞いていただいてよろしいですか」

 

マーケティングの神様といわれるコトラーが提唱するマーケティング4.0、つまり「自己実現欲求」に“ど・ストライク”の提案であること、さらに、こんなにも自分のことを気遣ってくれることに対しての感動を通り越した感謝を自然に引き起こす要素が詰まっている、そう、「魔法の言葉」であるからです。

 

あなたのお店は、お客様にどれだけ感謝されていますか。

せめて上位客には定期的にこの程度の提案をしましょうね。

上位客の離脱は取り返しのつかないほどのダメージを与えます。

離脱の一番の理由は「ただ、なんとなく」なのです。

そう、情報力、企画力、提案力がなされなくなると、魅力に乏しいお店になって、「ただ、なんとなく」お客様は離れていってしまうのですね。

 

 

【経営の原理原則】その㉑

「オレがいなければ組織は回っていかない

 オレがいなくても組織は回る」

 

マネジメントがわからない人は、自分が技術の面においてもトップでいなければ気が済まないものです。売れっ子ナンバーワン美容師として君臨し続けたいと。なかには、売上は自分ひとりで作っているなんて考えている人もいます。

 

“オレがいなければ組織は回っていかない”との傲岸不遜な考えが芽生えます。

あるいはこうとも言えます、自分が一番でなければ不安だという心理がそこに働いているからと。

 

これでは組織は大きくならないし、人も育ちません。技術志向の理美容業界にはこういった例が多すぎるほどありますね。このシリーズ10回目で「組織は経営者の器以上に大きくなれない?」でやりましたが、その典型的な例だと思います。

 

それではダメなのです。あなたがいなくても組織はちゃんと回っていける。これがマネジメントというものです。

ある程度のスタッフをかかえたら、できるだけ社長業に専念しましょう。社長の専権事項はとても大きくて重要なことばかりなのですから。

 

どこかの経営者グループは、入会の条件がハサミを置くことだといいます。

 

顧客迎合はダメ

 

【経営の原理原則】その㉒

「顧客の創造ではなく顧客への迎合は即刻やめる」

 

マーケティングに裏付けられた正しい企業活動は「顧客の創造」。

別名、「新しい市場の創造」とも言えます。

 

ところが、顧客の創造に取り組むことを忘れて顧客に迎合する例が後を絶ちません。

 

同じ商圏内のライバル他店とくらべて、値決めをしたり、クーポンなどの特典を付与したり、ディーラーの勧めに安易に乗ってメニューをそろえたり、店販品を仕入れたり、他店の成功事例をパクッたりして、なんでもかんでも、自分を見失って、これをやったらお客様から喜ばれるんじゃないかと、根拠もなしに迎合しようとしてしまいます。

 

これでは自らの首を絞めるようなものです。

 

顧客の創造はもちろん目指すところですが、顧客への迎合はよくありません。

自分のビジネスのかけがえのない独自性をハナから諦めていることですし、自分の人生さえ見失うことに等しいからです。

 

お釈迦様はこう言いました。

天上天下唯我独尊(てんじょうてんげゆいがどくそん)」

人間に生まれた者だけができる、たったひとつの貴い使命がある。

おしなべて貴い、あなただけの生き方を貫き通そうじゃありませんか。

 

だって、たとえ世界で70億人の人がいようとも、容易にあなたを見分けられるから。

あなただけの独自性が輝いてそこにあるのだから。

 

 

最重要な顧客の価値

 

【経営の原理原則】その㉓

「事業にとって最重要なことは顧客にとっての価値」

 

「顧客の価値とは何か? 

最も問うことの少ない問いである。答えは明らかだと思い込んでいるからである。

品質が価値だという。

この答えはほとんど間違いである。

顧客は製品を買ってはいない。欲求の充足を買っている。彼らにとっての価値を買っている。」(ドラッカー)

 

事業とは、顧客の価値と考えているものに、自社の強みを使って貢献していくことなのです。規模の大小は関係ありません。

顧客の価値に対する貢献なしには、組織が存続することはできません。

顧客の価値に自社の強みをどうやって結合させるか。

これが事業のキモと言えます。

 

もうひとつ、ドラッカーの言葉。

「強みに集中せよとの格言は常に正しい。」

 

 

【経営の原理原則】その㉔

「競合相手は同業種にとどまらない」

 

可処分所得(自由に使える手取り収入)をどう振り分けて使うかは100%、顧客の側が握っています。だから、その振り分け先の競争になるのです。

 

あなたのお店が他の消費支出、たとえば洋服を購入する、コンサートへ出かける、外食をする、なんて場合とくらべて優先順位で勝てるのか、価値で勝てるのか、そういう勝負になっていることに気付くべきです。

 

あこがれのアイドルグループのコンサートチケットがやっと入手できて7000円、美容室のカット&カラーの施術料金が同じく7000円とします。手にできる情緒的価値はどちらが高いか? こういう競争下に置かれているということです。

 

つまり、自由につかえて、なおかつ限りある消費できるお金のすべての支出先が競合であると言えます。

 

競合は同業者だけと錯覚していたら足元をすくわれます。

 

非顧客に注目

 

【経営の原理原則】その㉕

「非顧客に注目せよ」

 

「最も重要な情報は、顧客ではなくノンカスタマー(非顧客)についてのものである。

変化が起こるのは、ノンカスタマーの世界においてである。」(ドラッカー)

 

既存客を見ているだけでは没落するとドラッカーは言います。

昔、デパートは既存客である中年女性だけを見て手厚くサービスをしていました。就業機会の大きな変化によって中年女性が働きに出るようになり、デパートの閉店時間までに行けなくなってしまって大きく売上を落としたのです。

その際に、パルコやルミネなどが、現時点での非顧客である女子高性や女子大生に焦点を当て売上を回復させたのですね。

 

そこから時代は進んで、生活が夜型にシフトした結果、“開いててよかった”のコンビニの時代になりました。

 

そして現在はネットの時代です。

 

現顧客だけではなく、現在あなたのお店のサービスを利用してもいいのに、なぜか利用しないお客様を常に見ていく必要があります。また、なぜあなたのお店に来ないのか、その理由を知る必要もあります。

 

それは、あなたのお店を知らしめる宣伝活動が、さまざまな意味において不備であるという理由が大半なのですが。

 

「決心する前に、完全に見通しをつけようとする者は、決心することができない。」

(アミエル)

 

【経営の原理原則】シリーズ⑬~⑱

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 だったら美容師お辞めなさい

 

【経営の原理原則】その⑬

「店販品売上は信頼のバロメーター」

 

この原理原則シリーズの第1回目に「顧客が求めているのは問題点の解決策である」と述べました。

 

解決するためには、サロンでの施術ばかりでなく、日頃のお手入れ、つまりホームケアが欠かせないものです。

そのための推奨品が店販です。医師の処方箋となんら変わるものではありません。

ですから、店販品が売れないのはその人がお客様から信頼されていないからにほかなりません。

 

同じ推奨品がネットで安く手にできるから(だから売れない)と反論する人もいます。

いやいや、信頼があれば、「あなたから買いたい」となるはずです。(そんな消費者心理は別の機会で説明したいと思います)

 

「私たちは物売りじゃない?」

それはプロとして責任放棄をする詭弁に過ぎません。

だったら美容師お辞めなさい、と言いたい。

 

ミッションの偉大さ

 

【経営の原理原則】その⑭

「モチベーションではダメ。マインドセットがモノを言う」

 

業界にもモチベーションを売り物にするコンサルがいるようです。確かにスタッフをセミナーに通わせれば、やる気モードは飛躍的に上がるでしょう。

ところが、やる気は3日と続きません。あのセミナーの熱く燃え上がった気持ちもとたんに冷えてしまいます。

 

なぜなら、やる気を継続させる仕組みがないからです。

 

それでまた、自分自身も、スタッフも、鼓舞させるためにモチベーションのセミナーに通う。

そんな繰り返し。一時的な熱気に酔いたいがために。これでは本末転倒、お金と時間の無駄です。

 

マインドセットとは、端的に言えば、経営者の事業の目的や使命感(ミッション)に共鳴すること、心から賛同することが欠かせないのです。だから意識の状態が何段かギアアップして、そのままの状態を長い間保てることができるのです。

 

「私なりに考えたその使命というものについて、従業員に発表し、以来、それを会社の経営基本方針として事業を営んできた。従業員も私の発表を聞いて非常に感激し、いわば使命感に燃えて仕事に取り組むという姿が生まれてきた。一言にして言えば、経営に魂が入ったといってもいいような状態になったわけである。」(松下幸之助

 

「信念が変われば 思考も変わる

 思考が変われば 言葉も変わる

 言葉が変われば 行動も変わる

 行動が変われば 習慣も変わる

 習慣が変われば 人格も変わる

 人格が変われば 運命も変わる」

 (ガンジー

 

あなたのお店の、会社の、ミッションはなんですか?

それを従業員に浸透させて行動まで落とし込むために、具体的な方策(仕組みづくり)をしていますか?

 

繁栄か衰退か、それを決するのはミッションであると言っても過言ではありません。

 

 

肺肝を見るごとく

 

【経営の原理原則】その⑮

「あなたは2つの眼でしか物事を見ることができないが、スタッフは人数×2の眼であなたを見ている。それも、とても厳しく」

 

中国の古典『大学』の中に次の言葉があります。

「人がおのれを視ること、その肺肝を見るがごとく」

 

『大学』は儒教の教書の中でとくに重要とされる四書の中の1つです。ちなみに四書とは『論語』『大学』『中庸』『孟子』のことで、さらに四書五経といって五経とは『易経』『書経』『詩経』『礼記』『春秋』のこと。この四書五経を学ぶことは当時の中国のエリートたちにとって必須のことでした。

日本でも江戸時代には寺子屋を通じで広く庶民が四書五経を学習しました。だから識字率の高さは世界一で、その教養の高さに日本を訪れた当時の外国人たちは一様に驚いたといいます。

 

そして、こうも思わせたのです。「日本民族は侮れない」と。中国(清)を侵略したようにアヘン戦争など仕掛けて日本民族を手玉に取るのは困難だと。話が脱線しました。

 

東洋思想を現在の経営に活かしたい私としては、おおいに強調したい言葉がこれです。

「人が自分を視る」見るとしないで、わざわざ「視る」としているくらいですから、ねっとりとした視線のねばつきを感じます。それくらい見られているわけ。

 

何を? 自分のことを。まるで「肺肝を見る」ように。肺臓や肝臓まで見抜くほどにも他人の眼に鋭く見られているということ。

 

スタッフ(社員)からはもっと厳しく見られていると思ったほうがいいです。30人のスタッフがいれば厳しい60個の眼で経営者を観察している。

100人のスタッフがいれば、200個の眼で見られているというのは現実的ではないとすれば、10人の店長と本部スタッフの数十個の眼で日頃から経営者は観察されているのが実情に近いでしょうか。店長はそれぞれ10人のスタッフがいれば20個の眼で観察されているのです。

 

どんな目で?

「肺肝を見るように」鋭く見られているということです。

だから表面を取り繕ってもダメです。すぐ見抜かれます。

トップに立つとはそういうことです。

 

そして『大学』はその言葉の次にこういう言葉を継ぎ足しています。

「ゆえに君子は必ずその独(どく)を慎むなり。」

 

だからリーダーたる者は、必ずおのれ自身を慎んで修める修行が大事だというのです。

リーダーたるに相応しい人格を身につけなければならない、というわけ。「独を慎む」ですから、人の目に触れない一人のときであっても、常に自分自身の身を、言動を慎むこと。

 

ところがSNSなどでは、うまいものを食った、うまい酒を飲んだ、ブランド物を身に着ける、高級外車を乗り回すといった写真や記事を自慢気に載せる人がいるようですが、スタッフからどういう眼で見られているか想像力をちょっと働かせてほしいと思うのですね。

 

独を慎むためには良書にふれること。なかでも良書の最高峰が『論語』だと確信します。

 

入るを量りて出るを制す

 

【経営の原理原則】その⑯

「入(い)るを量りて出(いず)るを制す」

 

儒教の経典『礼記』に記されている財政の心構えです。正確には「入るを量りて出るを為(な)す」。

二宮尊徳の言葉で知られ、最近では稲盛和夫氏がJALの再生を引き受けたときに記者会見で語ったのもこの言葉です。

 

古くは、米沢藩を立て直した上杉鷹山がいます。みずからが倹約を旨とし、生活を切り詰め、食事は常に一汁一菜で、衣類も絹物は着用せず、一生、木綿服で通したと言われています(出るを制す)。

 

そして、荒れた農地を耕し、特産物生産を新興し、農村経営の多角化による収益の構造改革を推進した(入るを量る)。

(私が私淑する山田方谷は鷹山を上回る発想とスケールで備中松山藩の財政を立て直しましたが、敗れた幕府側の賊軍に属していたため歴史の表面から葬り去られました。長くなるのでここではふれません。)

 

現在のように、「入る(収入)」が減るのが当たり前の経営環境のなかでは、「出るを制する(経費削減)」で無駄な出費は極力抑えた予算を作成し、剰余金(繰越金)を必死で生み出すこと。

そして生み出した剰余金を未来の売上の核となる新規事業創出や人につぎ込んでいく。

これこそ「入るを量りて出るを制す」という真の意味であり、今のコロナ禍、最も求められている経営姿勢であるでしょう。

 

顧客満足従業員満足

 

【経営の原理原則】その⑰

顧客満足=価値>価格

 顧客不満足=価値<価格」

 

支払った価格(料金)以上の価値を受け取れば満足。反対に、受けた価値以上の価格だったとしたら不満足となります。

 

だから、価格というのは、絶対的な安い・高いという基準はないということ。受けた満足の度合いによって、満足か不満足かが決まるのです。

つまり、個人個人の相対的な価値によって決まるということですね。

付近のお店よりも高い料金であってもお客様は満足して通い続けている。反対に、安い料金であっても、いつも新規客ばかりで固定客にならない。そんな例はどこでも見受けられます。

繰り返します、料金に絶対的な値決めはないということです。近隣のお店を相場として料金決定をしてしまうと、取り返しのつかないことになってしまいます。

 

これが価格決定メカニズムの一筋縄ではいかないところなのですが、要は、いかに満足する層を特定し、集客し、満足する価値を提供できるか、なのです。

 

そうすれば、同業他店とくらべて高い・安い・値ごろなんて発想は不要となります。

いかに自店の独自性を打ち出していったらよいか。

そういう思考の習慣づけが、新たな価値の創造につながる、あなたのお店の独自性や卓越性を見い出す原動力となるのですね。

 

 

【経営の原理原則】その⑱

「望む利益は従業員満足次第」

 

従業員が満足して働かなければ、望む利益は得られません。

利益とは顧客満足の総量ですから、従業員が満足して働いていないお店ではお客様も満足しないのです。

 

まして理美容業のように、人的なサービス100%で成り立つ業界であればなおさらです。

ブスッとしていて愛想のひとかけらもない人に接客してもらったら、お客様は悲劇というもの。満足どころか、不満足しか残らない。いや、それどころかクレーマーの発生となってしまうかもしれない。そしてSNSで言いふらされたらたまったものじゃありませんね。

 

だから、儲からない。原理原則です。

 

従業員満足に絶対欠けてはいけない2つのこと。

それは「物」と「心」の両面で初めて満足は実現できるということ。これも原理原則です。

物心の「物」とは、給料をベースにした労働条件の満足のこと。「心」とは、経営者であるあなたのミッションとビジョンに心から共鳴して働くことです。最強なのは、経営者であるあなたのビジョンと従業員のビジョンが一致すること。

 

以上17、18の内容については、私の過去のブログ「経営は原理原則で成り立つ」を参照していただきたいと思います。

 

≪つづく≫

 

「私はイチゴクリームが好物だが、魚はどういうわけかミミズが大好物だ。だから魚釣りをする場合、自分のことは考えずに、魚の好物のことを考える。」

デール・カーネギー

 

【経営の原理原則】シリーズ⑧~⑫

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売上予測が5%と狂わない

 

 【経営の原理原則】その⑧

「理美容業はフロービジネスの典型。それをいかにストックビジネスへとシフトしていくかで経営の安定性は高まる」

 

理美容業は典型的なフロービジネス。言ってみれば、来店するかしないかは、たとえ予約制度が生きていたとしても、お客様のその日そのときの都合任せ、気分任せ、天候任せに左右されてしまい、安定するものではありません。

 

(株)田谷が美容室で初の株式の上場をするにあたって決定打となったのが、月売上が5%と狂わなかった、売上予測の正確性と予測に裏打ちされた経営の安定性によるのです。つまり同社では業界で初めて“賞美”期限(提供したヘアスタイルの維持保証期間)を設けて次回の来店管理を美容室主導で行ったことなのですね。

 

つまり、フロービジネスからストックビジネスへシフトするには、

・固定客の割合をいかに多くするか。

・さらに固定客からファン客へといかにシフトしていくか。

・また次回来店をお店主導でいかにできるか。

にかかわってくるのです。

 

もちろん、他の、まったく新しい新規事業でのストックビジネス(たとえば顧客情報をもとにしたECサイト構築や異業種とのアライアンスなど)への展開もここに含まれます。

 

現在のサロン業績の差は、このストックビジネスへいかにシフトできているかの差。

既存客との関係維持・強化に真剣に取り組みましょう、って何度も申し上げていることですが。

 

 

イノベーションは他者依存ではダメ

 

 

【経営の原理原則】その⑨

イノベーションは、製品や技術で引き起こされるのはマレ」

 

ドラッカーは「イノベーション7つの機会」として、新しい知識、つまり新しい製品や技術によって引き起こされるイノベーションの機会は一番低いと言っています。

 

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これは簡単に納得できることです。

こんな新しい製品が開発されたと言っても、開発者であるメーカーはシェアナンバーワンを企業論理として持っているわけで、どこよりも早く新製品を導入したお店であっても先行者利益はわずかな期間に過ぎません。それが良いものであればあるほど一気に業界に普及してしまって先行者利益はなくなります。

結局、どんな技術であれ製品であれ、やがて業界に普及していけばそれが業界標準(スタンダード)となってしまって、イノベーション効果はすぐに失せるのですね。

 

製品や技術に依存していては、最後に痛いしっぺ返しを食らいます。

理美容室をテストマーケティング出先機関と位置付け、何度も利用され、最後にはハシゴを外されてパブリック市場へと流れていった事例は枚挙にいとまがありません。

 

ではどんなイノベーションの機会があるのか。それをどうやって見つければよいのか。

簡単なことです。ドラッカーイノベーションの7つの機会、その2番目に掲げてあることですが、理想と現実のギャップが存在するところはすべてイノベーションの機会があるということです。

たとえば、人の採用難、集客難。ここのギャップをどうやって埋めるか、その解決策こそイノベーションにほかなりません。

 

 

経営者の「器」とは?

 

 

【経営の原理原則】その⑩

「組織は経営者の器以上に大きくなれない?」①

 

なぜ「?」マークを付けたのかというと、一見真実のようでじつは真実ではないからです。

長くなるので、①②に分けてお伝えしたいと思います。

 

経営者の器を形成するには「技能力」「戦略立案・コミュニケーション力」「人間力3つの「力」が必要と言われています。(※それぞれの力についての説明は省く)

そして、器を大きくする順番は「人間力」→「戦略立案・コミュニケーション力」→「技能力」。

 

技能力は本来、スタッフが仕事に使うスキルで、このスキルをいくら磨いたところで社長の器は大きくなりません。それどころか、技術者同士のプライドが働いて、自分よりスキルが上のスタッフを排除さえします。ナンバーワン売れっ子スタイリスト=社長という見事な図式が出来上がります。

こうなると、一技術者の器以上に組織は大きくなるものではありません。こういうケースは技術主導の業界であるからか、数え切れないほど多くの実例にぶつかります。

 

次に「戦略立案・コミュニケーション力」。このスキルは、思考力や行動力といったように、ビジネスの構想力や人を動かす行動力に深くかかわるスキルです。経営者の器を大きくするには、一定レベルまで磨く必要があります。

このレベルの経営者も少なからず存在します。

 

しかし、最後の「人間力」、これが経営者の器を大きくする必須の要素となるのです。哲学や価値観、志、信念や基本的ポリシー、度量や徳性といった、その人間の有り様を表すヒューマンスキルのことで、他者への影響力に大きくかかわるスキルなのですね。

 

だから、人間力を磨けば磨いただけ経営者の器は大きくなります。大きくなればなっただけ組織は大きくなるというわけです。

 

では、どうやって経営者としての器を磨けばよいか、次でお伝えしますね。

 

 

【経営の原理原則】その⑩

「組織は経営者の器以上に大きくなれない?」②

 

どうやって経営者の器を磨けばよいのか。

経営者の器を磨く必須の要素として「人間力」を挙げました。人間力とは、哲学や価値観、志、信念や基本的ポリシー、度量や徳性といった、その人間の有り様を表すヒューマンスキルのことでしたね。

 

人間力を磨き上げるためには、「無知の知」を徹底的に実践することだとしかるべき指導書には書いてあります。

 

たとえば『論語』には「知るを知るとなし、知らざるを知らずとなす。これ知るなり」という、私の大好きな言葉がしたためられています。無知であることを自覚することで謙虚に学びの姿勢が取れる。謙虚に学べば学ぶほど無知を克服していって、確実に成長をしていくということ。

 

トップであっても驕ることなく、素直な気持ちで無知の知を実践していくと、物事を本質的にとらえることができるようになり、ぶれない哲学や信念が身に付き、志が醸成されるということです。

また、人の苦労やモノの価値も正確に理解できるようになるので、裁量や度量も高まっていく。

 

私の経験からも同じことが言えて、つまり謙虚な経営者ほど素直に言うことを聞いてくれて、望む結果が得られています。一方、過去の成功事例が邪魔をするのも大きな要因だと思いますが、謙虚ではなく、学ぶ姿勢に欠ける経営者は、真逆の結果を招いています。

 

人間力が大きくなると、自然と経営者の器も大きくなり、経営者の器が大きくなるほど、優れた異能の人物が経営者の周りに集まるのですね。

 

鉄鋼王アンドリュー・カーネギーの墓碑銘にはこういう言葉が刻まれています。

「おのれよりも優れた者に働いてもらう方法を知る男ここに眠る」

 

これが経営者の器以上の組織になれることの秘訣です。

このレベルの人にはなかなかお目にかかれないのが現実です。

私の交友範囲で言うなら、はっきり言って、五指に余ります。

 

 

野心と志との決定的な違い

 

 

【経営の原理原則】その⑪

「組織は頭から腐る」

 

事業再生のプロ中のプロである冨山和彦氏に言わせれば、経営の悪化した企業に共通していたのは、「一流の現場を持ちながら、経営が三流だった」ということだそうです。

 

経営のトップに上り詰めれば、誰も意見を言わなくなる。それをいいことに、いつの間にか裸の王様になってしまいます。

やがて現場とのズレ、市場とのズレを来していることに気付かなくなって経営不振に陥ります。

 

そして不振の原因を、他人のせい、時代のせい、環境のせいにする。ある大企業のトップが報道陣から責任をしつこく追及されると、「私だって全然寝ていないんだ」と声を荒げて抗議したのは有名なシーン。これなど典型的な原因他人論ですね。

 

すべての原因はトップである経営者自身にあります。

ビジネスで問題にぶつかれば、それは自分自身が問題を作ったということ。

スタッフの離職や意思疎通の悪化、相互不信など人間関係の問題にぶつかったなら、それはあなたが人の扱い方をわかっていないから。

資金繰りに窮するなら、お金について何も知らないから。

集客が思うようにいかなければ、それはマーケティングを知らないから。

顧客の問題なら、顧客を理解していないから。

すべては外側ではなく内側の問題。内側のトップである、あなたの責任。

 

また、腐る原因にはこういうのもあります。

私利私欲の野心でビジネスに携わっていること。

野心とは、自分のため。

志とは、世のため人のため。

 

残念ながら、私が数万人の経営者にお会いしてきて言えることですが、圧倒的に「野心」の人が多いように思います。口では志を言っていながら。

 

「利によりて行えば、怨み多し」(論語

私利私欲で行う野心的な事業は、他人から怨みを買い、結局長続きしない。

 

現代のわが国にも、立派な経営者の言葉があります。

「動機善なりや、私心なかりしか」(稲盛和夫

 

経営者としてひたすら人間を磨くことですね。寸時も休むことなく。

そんなの面倒臭いと言うのであれば、ストレートな言い方をします、それなら経営者をおやめなさい。そう言いたいですね。

 

 

理想のお客様の集め方

 

 

【経営の原理原則】その⑫

「顧客は誰か?それは上位2~3割の上位客が知っている」

 

ドラッカーの「経営者に贈る5つの質問」の1つ。あなたのお店の顧客は誰か? どういうお客様があなたのお店の理想のお客様か? 理想のお客様を見つけ出す方法は? 見つけ出せたら、どういう方法で集客すればよいのか?

 

すべての答えは現在の上位客が持っています。だから上位客に謙虚に聞けばいいのです。「こんなに多くの美容室があるなかで、どうしてうちのお店に通ってきてくださるのですか」と。あなたの経営のお役に立つことだったら、そこは上位客のことです、積極的に語ってくれるものです。

 

通い続ける理由は、丁寧な接客と的を得たカウンセリングかもしれません、気に入ったカット技術かもしれません。それらの声を集めてひとつの文章にまとめる。これがキャッチコピー。もっと言えば「USP」となります。

 

そして、上位客が住まう地域はどこか。その地域は他とは違った特長があるはずです。そう、上位客が住まう地域であっても、まだあなたのお店の存在さえ知らないし、来店していない人が圧倒的に多いはずなのですね。

そういった地域をデータ抽出する無料のやり方があります。以前にも何度か説明した郵便局のGISのことです。このシステムを使って集中的にチラシポスティングするのです。アナログなやり方とバカにしてはいけません。想像以上に効果が大きいですから。さらにGoogleマイビジネスを駆使すれば効果は倍加します。

 

これが、あなたのお店がぜひ来てほしいという潜在客に確実にリーチする方法です。

大切な集客を他者依存にしていてはいけません。コストばかりがかさむし、そんな方法では、理想のお客様には振り向いてももらえないと思ってください。

 

≪つづく≫

 

「死んだときに墓場で一番のお金持ちになりたいとは思わない。

私にとって重要なのは、眠るときに自分たちの素晴らしいことをしたと言えることだ。」

スティーブ・ジョブズ

 

【経営の原理原則】シリーズ①~⑦

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好評の原理原則シリーズ

 

Facebookに連続で投稿して好評だった「経営の原理原則」シリーズ。

内容を多少改訂してまとめてみました。

今回は①から⑦まで。

 

混迷を極める現代だからこそ、経営の原点、基本のキに返ることはとても重要なことです。はっきりしましたね、このコロナ禍にあって、順調な業績をあげているのは、原点に立ち帰って、つまり原理原則を理解して地道に実践しているところなのです。

 

 【経営の原理原則】その①

「顧客が求めているのは問題点の解決策である」

 

にもかかわらず、問題点を明らかにしないで、問題点を解決する手段に過ぎないカラーだのカットだの縮毛強制などのメニューを売り込む。

 

これを本末転倒と言います。あるいは、手段と目的のはき違えとも。

だから、メニューそのものの価値を生まない。価値を生まないから値下げで訴求するしかなくなります。

だってそうですよね、お客様の悩みを理解せず、いきなりメニューを売り込んだって、なんの価値も生み出すことなく、かえって迷惑ともなりかねませんから。

 

そこで、問題点を明らかにするためにカウンセリングがあるのです。

唯一にして絶対の営業機会がこのカウンセリングです。それに気づかずに、いきなり「今日はどうしましょう?」とやってしまうのですね。

 

そうではなく、カウンセリングによって問題点を明らかにし、それを解決すること。できるだけ解決するような姿勢で臨むこと。

解決するために、必要となるメニューや施術工程を提示し、あるいはホームケアのための店販品を推奨販売する。

けっしてこの順番を間違えてはなりません。

お客様のお悩みを明らかにして解決策を提示すること。これ以外で美容室の価値の向上はあり得ないのです。

 

 お金の流れを知る

 

【経営の原理原則】その②

「会社は借金では潰れない。資金が回らなくなって潰れる」

 

借金返済をする原資は税引後の利益。

だから会社を維持しようとするなら、粗利、固定費(人件費)、人件費以外の固定費、税引前利益、税引き後利益、繰越金という6つの項目に注力し、経費のコントロールをしながら必要な支払いができるよう、つまりキャッシュフロー経営に徹することです。(下の図)

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キャッシュフローを理解する

 

このように会社の中のお金の流れを知ることがとても重要。

どこの経費をコントロールするか、あるいは売上をどれだけ伸ばせば望む利益を得られるのか、この図を見ればたちまち理解できます。

 

私のクライアントさんはこの図をもとに、どの部分をどうやって経費コントロールしたらよいのかを理解して実践。結果は、望む利益を2倍、3倍にしています。

 

 【経営の原理原則】その③

「緊急時には経費の削減。次に売上を伸ばす方策を考える」

 

②のキャッシュフロー経営の続き。

会社の利益を増やすには、経費を削減するか、売上を伸ばすかの2通りしかありません。

 

ところが緊急時には、経費削減が先。この順番を間違えてはなりません。

 

経営危機に陥っているにもかかわらず、アホなコンサルなどは、「気合を入れて売上を伸ばしましょう」「もっと集客に予算をかけて新規客を呼び込みましょう」「マーケティングを行って新しいメニューを導入しましょう」などとアドバイスをしますが、その間に会社は潰れてしまいます。

 

お金の流れのわからないコンサルの指導を受けていたら悲劇でしかありません。

 

  信頼貯金

 

【経営の原理原則】その④

「利益は顧客の満足の値」

 

売上の多い少ないは関係ありません。

料金の高い低いも関係ない。

利益がいくら残るか。それはお客様の満足の値なのです。

 

 【経営の原理原則】その⑤

「ブランドとは信頼の貯金箱。貯めるのは大変だが、失うのは一瞬で足りる」

 

ブランドとは、競合との圧倒的差別化、顧客ロイヤリティによる長期的・安定的売上確保、高い利益率といった特有の価値のことで、長い間のコツコツとした「信頼」の積み重ねによって初めて得られるものです。

 

ところが、信頼を失うにはほんの一瞬で足ります。

まさに「貯金」と言われるゆえんです。「信頼貯金」です。

 

まして今日のようにSNSが席巻している時代。ネット上のクチコミの悪評はたちまちウイルスのようにスピードをあげて拡散していきます。

ある調査によれば、宣伝広告を信じる人は17%、クチコミを信じる人は83%に及ぶそうです。

しかも女性のクチコミは男性の3倍も伝達力があり、なかでも人間の心理的特性から、悪い評判こそ拡散力があるというのですね。

 

地域密着の美容室なら受けるダメージは決定打となってしまいます。

えらいこっちゃ、です。

 

悪い評価を受けたらどうするか?

ブランド戦略とは、イケイケドンドンではなくて、その辺を含めて構築する必要があります。

 

 人時生産性を共通言語に

 

【経営の原理原則】その⑥

「人時生産性を業績の評価メジャーにする」

 

さまざまな生産性の指標がありますが、理美容業こそピッタリの相性を持つのが「人時生産性」の評価メジャーです。

 

粗利益額をスタッフ(社長・役員・事務員すべて含む)の総労働時間で割って求めます。

美容室の平均値は2000円と極端に低いのが実情です。

しかも、組織が大きくなればなるほど生産性は低くなるという傾向があります。

 

2000円を、1日9時間労働、月23日勤務、労働分配率(粗利に占める人件費の割合)55%で計算する。2,000円×9時間×23日×55%だから、

 

支給できる給料の限度額は227,700円。

年収にして2,732,400円。

 

だから、あらゆる業種業態で最低ランクに位置されてしまうのです。

その程度の年収しか払えないで、自分の役員報酬の額をSNSで発信して自慢する経営者がいたりしますが、従業員からは恨みを買うのは必定です。お話にならないレベルですね、まったく。

年収自慢をするなんて、どういう原因かわかりませんが、ある種のコンプレックスの裏返しでしょうね。

 

人時生産性を上げるには、粗利を上げる、スタッフ数を減らす、労働時間を減らす。この3つしかありません。それには、売上に直結した仕事、つまり稼働率を上げること。アイドルタイムを削減すること。

こうやって目の付けどころがはっきりすれば、後はどうやって稼働率を上げていくか?

 

私のクライアントさんのA社は、大型店ですが人時生産性は3000円を行ったり来たりといった、割と良好な業績でした。それを、ある改善ポイントを見つけて集中的に取り組んだ結果、わずか数カ月で人時生産性が4000円になったのです。半年後には4500円になって安定しています。

 

そこであなたに質問です。

上記の条件は変わらずに労働分配率55%、1日労働時間9時間、月23日間働くとして、このA社のスタッフにはいくら給料を支給できますか?

 

答え:512,325円

 

もっとも、全額支給しなかったとしても内部留保として資金をプールできますね。

とはいえ、いままで手にしたことのない給料の額を手にしているのは事実で、私はスタッフの喜ぶ顔を目撃しています。

 

こんな話をしても、相も変わらず売上を生産性と同一視している人には、馬の耳に念仏でしょうね。「人時生産性」を業界の共通言語にしたいと20年前からがんばっているのですが、道のりはまだ遠いようです。

 

 【経営の原理原則】その⑦

「集客も採用も同じマーケティング

 

魚のいるところに釣り糸を垂れる。これはマーケティングの鉄則。

しかし現在のようにモノやサービスが供給過剰になると、マーケティングは単純にはいきません。

 

・どんな市場(ニーズ)を選ぶのか(セグメンテーション)

・どんな魚を狙うのか(ターゲティング)

・どんなエサで釣り上げるのか(ポジショニング)

 

というマーケティングSTP戦略を駆使する。

これは集客も人の採用も一緒のことです。

                               ≪つづく≫

 

「ごくわずかの例外を除き、

原則と手順を理解していれば

問題は実務的に解決できる。」

ドラッカー

 

ポジティブ志向の落とし穴

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ポジティブ礼賛の風潮

 

世はポジティブ志向礼賛といった風潮があります。そう、“風潮”なのですから、確かな根拠があって礼賛しているわけではありません。

しかし風潮にしては、人物への評価や物事の価値判断に大きな影響を与えているようです。

私の場合、お恥ずかしいことですが、事業を失敗してからというもの、98%の人が私から去っていきました。

ある人は捨て台詞でこう言いました。「運の悪い人とは付き合わないっていうのが鉄則だから」と。

何が鉄則なのでしょうか。天地自然のなかにそんな鉄則は存在するのでしょうか。

たぶん、自己啓発本などで、運のいい人とだけ付き合え、運の悪い人とは付き合うなと。それを妄信しているのでしょうね。

 

思い込みのムリ

 

自己啓発=ポジティブ志向の先進国と言えばアメリカですから、アメリカ発の自己啓発本は日本で多く翻訳されて出版されています。

自己啓発本を書き、講演までして、それこそ巨万の富を得ている自己啓発家の類は何人もアメリカにはいるのですね。

それらはこぞって運の悪い人、ネガティブな人とは付き合うなと言っているようです。

 

しかし考えてみれば、「運の悪い人を遠ざけよう」とでもしない限り、簡単に崩れてしまうほどポジティブ志向って脆弱なものなのでしょうか。

ここに、思い込みの無理があると思うのですね。

 

周して比せず

 

東洋では、こんなキャパシティの狭い考え方はしません。

たとえば儒教の経典である『論語』にはこうあります。

「君子は周(しゅう)して比(ひ)せず、小人(しょうじん)は比して周せず。」

「君子」とは徳性のある人、人の上に立てる人、リーダーのことを言い、「小人」とは度量や品性にかける人、つまらない人のことを言います。

意味は、「君子は誰とでも広く公平に付き合って、偏った付き合い方はしない。

しかし、小人は、それとは反対に、一部の人とばかり付き合って、広く人と付き合うことをしない。」

だから、君子の付き合い方をしなさいと言うわけです。運の悪い人、ネガティブな人を避けてはいけない、遠ざけてはいけない、広く等しく付き合いなさい、と。

まさに君子、度量の広い考え方ですね。

 

懐が深い東洋の世界観

 

論語』の別のところにはこういう言葉もあります。

「三人行えば、必ず我が師有り。其(そ)の善なる者を択(えら)びて之(これ)に従い、其の善ならざる者にして之を改(あらた)む。」

―三人が行動すれば、そのなかには必ず学ぶべき師がいる。そのよき人を選んで見習い、よくない人を見ては、自分に省(かえり)みて改める。―

 

よくない人とは、尊敬できない人、運の悪い人、ネガティブな人のことですが、その人の言動をよく見て、自分が同じことをしていないか我が身を振り返って反省して改めましょう、と言っていて、さらに、それができれば、そういう人も自分の先生にすることができるとまで言っているのですね。そう、反面教師にしようと言っているのです。

 

「善ならざる者」も先生にすることができる。じつに懐が深いですね。

 

正見そして諦観

 

さらに、ポジティブ志向をしていると、現実を忘れて、とんでもない理想や夢ばかりを追い求めることになり、結果的に不幸に陥ってしまうという例は数え切れないほどあります。

 

東洋ついでに仏教のことを言います。仏教では「正見(しょうけん)」という考え方があります。ありのままを見るということです。

たとえば、お腹が痛くなったならお腹が痛いという事実をありのままに認めるということです。そうすれば、病院に行くなりして必要な措置を講じることができます。

ところがポジティブ志向になると、痛いなんて我慢すればやり過ごせる、たいしたことではない、と考えます。そして、症状は悪化して生命にかかわるほどの取り返しのつかないことになったりします。

 

これが企業経営や政治の世界なら、ポジティブ志向の失敗はとてつもない悲劇となります。今日のような危機的な時代はとくにそうです。

危機管理の鉄則は最悪を想定して手を打つことです。

ところがポジティブ志向になると、まだまだ大丈夫、それよりも気合で乗り切れなんて変な精神論をかざして、そのまま突っ走ってしまう。その結果が、多数の人を巻き込んだ、とりかえしのつかない不幸な事態に追い込まれてしまうのですね。

今回のコロナ禍での政府の対応、コロナ禍による経営環境の変化を教訓としない経営者の無策には、ポジティブを通り越してノー天気と形容したいほどです。

 

さらに仏教ではネガティブ志向の典型ともいうべき「諦観(たいかん)」という考え方もあります。なぜそうなったのか、冷静になって原因を明らかに見るということです。

 

徳川家康にとっての生涯で初めての負け戦と言われる戦いが三方ヶ原の戦いで、武田信玄軍に敗れて敗走した際に、家康はあまりの恐怖から馬上で脱糞したと言い伝えられています。さらに自軍の陣地に命からがら戻ってくると、絵師に銘じてそのままの情けない姿を描かせたといいます。みずからの慢心を戒めるために。

 

これこそ「諦観」です。自らの慢心が招いた敗戦であったと、しっかりと原因が家康にはわかっていたのですね。情けない自らの肖像画を見るたびに慢心とならないように自分自身を戒めていたのでしょう。ここが家康の凡百の武将と決定的に違うところです。

 

陰陽相待性の理論

 

このように、東洋の考え方というよりも世界観は、陰陽で成り立っています。陰もあれば陽もある、陰は陽を待ち、陽は陰を待つという陰陽相待性(西洋のように相対という互いに対立するという世界観ではない)の理論で成り立っているわけです。

 

ポジティブ志向おおいに結構。ただし、ネガティブを排除した志向はどこか危ういし、むしろ身を亡ぼすほどに危険。なぜなら世界は陰陽で成り立っているから。

ネガティブも仲間に入れてバランスよく生きましょう。また、組織も陰陽にのっとって運営していきましょう。

 

それが天地自然、宇宙の理(ことわり)です。

 

「陰陽なるものは、条理なり。

条理なるものは、本義を草木の理において取るなり。」

(三浦梅園)

 

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初出掲載:2020 年3 月19 日