経営とは原理原則
経営とは原理原則、あとはその時々のトレンドで表面加工すればよい。
つくづくそう思います。
原理原則から離れてトレンドばかり追いかけると、糸の切れた凧のようになって、あっちに流され、こっちに流され‥‥。落下してしまうのは時間の問題でしょう。これが理美容業界不振の大きな原因です。
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たとえば原理原則である集客を考えてみます。
集客には「内攻め」と「外攻め」があります。これが原理原則です。
内攻めとは、既存客との関係維持を言います。既存客との関係のパイプをより太くする、いわば絆づくりのことです。絆ができればけっして他店に流出しません。
外攻めとは、新規集客のことです。
だいたい美容室の場合は、既存客と新規客の割合は8対2が望ましいと言われています。なぜなら、既存客の離脱は、死亡、転居、転職などやむにやまれぬ自然現象で1割弱は離脱してしまうからです。さらにリスクを回避する意味で、あるいは増客を図る意味で2割は欲しいからです。
それ以上に新規客の割合が増えると、既存客の離脱につながります。既存客の離脱は経営を安定させません。なぜなら既存客の維持コストは新規客の獲得コストの5分の1で済むからです。既存客の維持コストの5倍もコストがかかる新規客獲得ばかりに注力すると、利益減のコスト倒れになって、忙しいばかりで儲けの少ない消耗戦に陥り、スタッフのモチベーションが低下してしまいます。
この辺の原理原則を理解しないで、新規集客ばかりに貴重な経営資源の多くを投入する。だから儲からないのです。
理美容室はここ5年間で500億円の売上減少。ところがどこぞの集客サイトはここ5年間で500億円の売上アップを実現している、こんな本末転倒の現象が起こっているのです。
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では、既存客との関係維持をはかるにはどうしたらよいか? その方法は以下のたった2つです。
既存客との関係維持のために
●新規客を必ずリピート客にする
➡来店動機を知ることと、今までのかなえられなかった希望、不安、不満、問題点を聞き出して、解決に向けた提案をすること。リピート率は飛躍的に向上します。
顧客がほしいのはプロダクトではなく、彼らの抱える問題の解決策だ。(ドラッカー)
●顧客情報を提案に活かす
➡あの心理学者マズローがとなえた欲求5段階説で最終の欲求が「自己実現欲求」です。そしてマーケティングの神様と称されるコトラーが、最新のマーケティングの現在地として世界に先駆けて日本で宣言したこのが、マズローと同じく「自己実現」だったのです。
消費が高度化してしまった現在では、とくにこの日本では、モノやサービスに求めるものは、機能でもない、価値でもない、それらはすでに充たされている。今度は自己実現の欲求を充たしてくれるもの、となったのです。
世界でも最前線の消費者がいる日本で初めてマーケティングの現在地をコトラーが宣言したのは暗示的です。
これを理美容に敷衍(ふえん)してわかりやすく言えば、「わたしのライフステージをもっともっと輝かしいものにするために、あなたはプロとして何ができるの?」との問いかけを真正面で受け止めて対応することです。
そこで初めて「顧客情報」が活きます。この人の人生の価値って何だろうか? 生活信条って? どんなライフステージを生きようとしているのか? 人生のゴールは?
そんな背景がわかったうえで最適なヘアスタイルを提案する。これが顧客の自己実現欲求を充たすすべてです。
言葉でこう言うとむずかしいかもしれません。しかし、大切なお客様を日ごろから注意深く観察する。理美容業ならそういうことが圧倒的に優位にできるポジションにいるのです。スタッフ同士で具体的なお客様を思い浮かべて、こんな提案をしたらあのお客様はもっと輝かしいライフステージを送れるはずだ、といったシミュレーションゲームをしてみてください。そして、勇気をもって一度提案してみる。最終的にその提案を受け入れるか受け入れないかにかかわらず、「あ、この人、本気で私の人生を応援してくれているな」と好意的に思ってくれます。確実です。
そういうことの繰り返しが、提案力のスキルアップを高めるのです。
儲けの少ない血みどろの戦いを強いを強いられるレッドオーシャンの海を脱出して競合のいないブルーオーシャンに船出できる、唯一にして最強の方法です。
顧客」はより幸せでよりよい人生を夢見ている。製品を売ろうとするのではなく、彼らの人生を豊かにするのだ。❞(ジョブズ)
■お客様の自己実現欲求を充たすためのシミュレーションゲームは用意しています。ご希望の方はお申出ください。ただし最初はファシリテーターがいないとゲームの進行は困難です。ファシリテーター付きで対応します。(有料)