市場を変える/社会を変える
現在の経営の共通テーマは「イノベーション」です。あらゆる業種業態にわたって共通のテーマでしょう。
イノベーションを起こさなければ、この閉塞状況は打破できない。そう、従来のビジネスモデルが疲弊をきたし、従来の延長線上では何をやっても儲からない、血みどろの戦いが強いられるレッドオーシャンに溺れるばかりだからです。
そこで、イノベーションが待たれるわけです。
ところでイノベーションとは、ドラッカーの定義によるとこういうことです。
「新しい価値の創造によって市場や社会に変革をもたらすこと」
市場や社会に変革をもたらす――超ド級のすごい言葉です。
では、今までに起こったイノベーションと言われるものはなんだったのか? 身近で思い浮かぶのがコンビニやスマホです。コンビニは消費のスタイルを変えたと言っても過言ではないし、スマホは歩くエンサイクロペディア(百科事典)、万能の受発信機能ということで、情報のあり方を変えてしまいました。
それくらいの市場を変える、社会を変えること、つまりイノベーションが求められていると。
こうなると、経営者の行為というよりも、無から有を創り出す芸術家の営みに近いと考えられます。
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私たちの美容業界、理容業界だってそうです。いや、真剣に問われるべきは、理美容業界こそイノベーションが最も求められていると言っても過言ではないことです。
それほど、従来のビジネスモデルは疲弊をきたし、儲からない、赤字サロン続出といった状況にあります。自分の人生にも、家族にも、スタッフにも、豊かな未来を描くことができない。SNS上で誰かが言っていました、もう美容師に将来はないと。
それはともかく、では、どうやってイノベーションを起こしたらよいか、ということです。イノベーションを起こす方向性ははっきりしています。「えっ、これが美容室?!」「これが理容室?!」と驚かれるような、消費者が描く従来の理美容室の概念をすっかり変えてしまうこと。
それも独りよがりではなく、しっかりとしたニーズがなければなりません。顕在化したニーズであるか、潜在化したニーズであるかにかかわらず。
イノベーションの起こし方
そこでヒントとなるのが、経営分析でよく使われる「SWOT」分析です。
・S➡強み
・W➡弱み
・O➡機会
・T➡脅威
まず内部環境分析で、
自社(店)の強みは何か?
自社(店)の弱みは何か?
そして外部環境分析で、
自社(店)にもたらす機会(チャンス)とはどのようなものか?
自社(店)にもたらす脅威とは何か?
以上のことがわかったら、こういう思考方法を組み立てます。
脅威を機会に変えるために自社(店)の弱みは無視して強みに集中特化する。
これがイノベーションを引き起こす鉄板の法則です。
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では具体的にやってみましょう。私が組織構築をお手伝いしている、これは「実話」です。
「日本はこの先、人口は減り続け、少子高齢化に突き進み、一方では競合店が多く過当競争下に置かれている。利益は先細る一方だ」
これがT、つまり脅威です。
この脅威をO、つまりチャンスに変えてしまいます。こうやって。
「人口減少、高齢化に突き進んでいるといっても一番の人口のボリュームゾーンは団塊の世代だ。なかでも団塊の世代の女性たちは、いつまでも美しくありたいと望んでいる。面倒臭い化粧はうんざりだけど、化粧の要らないまつ毛をしっかりと長く整えていられたら美しいままでいられる。でも、今はやっているまつエクは“いかにも”という感じで私たちには不自然。すぐ取れちゃうし、だいいち接着剤でのトラブルも絶えない。何かいい方法はないかな‥‥」
これが顕在も潜在も含めての高齢者のニーズであるとします。そういえば、60歳代の女性向けに月刊のファッション誌(『素敵なあの人』)が創刊されたと聞く。そのくらいファッションへの情報は貪欲だし、美しく素敵な人生を送りたいと希求している。(これを「顧客インサイト」とマーケティングでは言います)
こういうふうに脅威をチャンスへとダイナミックに転換していったのですね。
次に、外部環境の分析から、こういう発想を持ちました。
なにも年々先細る若い人をターゲットにすることはない。日本人の女性の平均年齢は2020年で50歳になる。市場性の豊かなミドル世代を狙ったらどうだろう。今までの強みであった頭髪の増毛技術をまつ毛に応用して、接着剤による装着を排し、結んで増やす増毛法でまつ毛を増やす、しかも自然な感じで、と。
結果、従来のまつエクよりも数倍も長持ちし、洗顔も気にせず行えて、うつぶせ寝も平気。接着剤を使わないのでアレルギーのある人にも安心、予期せぬ効果として、たるんだ目蓋を引き上げる、逆さまつ毛を解消、ということも実現できたです。
10年にわたる研さんの結果、この技術と装着の周辺器具とで特許まで取得しました。
さらにさらに、ひとりの独占とはしないで、広く美容師の共有財産として業界の価値の向上を図るべく、教育普及活動を活動の中心にすえた公益法人を立ち上げました。その収益性・革新性・将来性が評価されて東京都の経営革新事業の認定までされたのです。
残り少ない人生を素敵に美しく過ごすこと。これがひいては社会への参画意識を引き起こし、前向きでアクティブな老後を送れるという「こころのケア」を導く。支援できれば、地域社会の、家庭の、こころの豊かさにつながり、医療費の削減にも寄与する社会貢献事業としても位置付けることが可能となるというわけです。
従来の美容、理容の概念を変えた社会変革事業。これぞ、イノベーションです!
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特許技術ですから、それを身に付けた美容師は地域独占です。まつエクのように競合が現れ料金競争に陥ることは皆無です。まさにブルーオーシャンですね。
いま公益法人の活動は開始したばかりです。血みどろの消耗戦を抜け出て、安定した収益と自由時間の確保(人時生産性は1万4000~5000円ですから短時間で効率よく稼げます)、そして豊かな未来を手にするために、ご興味ある方はコメントください。活動開始は早いほどいいですよ。
今回はチャンスとなる情報を差し上げました。
「チャンスは平等、結果は不平等」です。