どうでもよい部分に注力ばかり
現在の理美容業界の現状は枝葉末節の状態に置かれていると言っても過言ではないでしょう。枝葉末節とは、本質から外れた些末なことに翻弄されているということです。本質を忘れた経営の行き着く先は真っ暗の闇です。なぜなら、間違った問題への正しい答えを求めるような虚しい行為だからです。
さまざまな証拠があります。
たとえば、巨大集客サイトに高い掲載料を払ってお客様を呼び込もうといったこともそうです。気持ちは理解できます。人口減少に競合店の増加。指をくわえてみているだけでは集客はできない。それはそうでしょう。だからといって、集客を安易に業者頼みで任せてしまっていいものでしょうか。高いお金を払ったら検索上位、その他に、検索上位になるために、さらにコンサルまでお願いして(そういうコンサルがいるのです)、高いコンサル料を払ってブログ数のアップだのスタイルの写真アップだの強要されるスタッフはたまったものではありません。
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このように、本質を離れた枝葉ばかりに注力すると、経営の体力をどんどん失ってしまいます。
間違った問題への正しい答えほど、始末におえないものはない。(ドラッカー)
本質とは、いくつもある競合店を振り払って、あるターゲットとするお客様をいかにあなたのお店に呼び込むか、つまりマーケティングのことです。マーケティングを知らなければ、枝葉の部分にお金ばかりをつぎ込む羽目になります。
売り上げを構成する3つの項目
その辺のお話はまたの機会にやりましょう。今回は、いかに売り上げを上げるか、その本質の数字の見方です。売り上げはこういった公式で求められます。
▶売上=客数×客単価×来店回数
鉄板の公式ですね。こう書くと、みなさん、“そんなのわかっているよ”と答えます。しかし、本当にこの公式を理解し、また実践している人となると、トホホ‥‥の現実に出合います。
巨大集客サイトを利用する人に共通する欠点は、新規集客ばかりに目が行っていることです。上の、公式に当てはめれば、「客数」にばかり目が行くのです。客数欲しさに、集客サイトに広告を掲載してクーポンを発行、実質的値下げをします。すると、客数は増えても単価が増えません、というか、下がります。結果、スタッフは忙しいばかりで売上げは増えていきませんね。まして、リピート率が低いとなったら、来店回数も減ってしまいます。スタッフは虚しさしか覚えません。
では、鉄板の売上公式を、ある説得力のある方法で腑に落ちる説明をします。それはこういうことです。
鉄板の公式を理解する
「客数」「客単価」「来店回数」の各項目を、たった数%アップさせるだけで売上げは2ケタアップするのです。驚きましたか? 本当かどうか、実際にやってみましょう。客数1000人、客単価6000円、来店回数5回のお店を例に取り上げましょう。客数1000人×客単価6000円×来店回数5回で、売り上げは3000万円となります。
これを、「客数」で3%のアップで1030人、「客単価」を同じく3%アップで6180円、「来店回数」を、こちらはちょっとがんばって4%アップさせます。すると、こういう結果が出てきます。
売上げ = 客数 × 客単価 × 来店回数 |
1000人 6000円 5回 = 3000万円
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3% 3% 4%
1030人 × 6180円 × 5.2回 = 3310万円
11%UP!
そうです、3000万円➡3310万円、11%増と2ケタアップできました。魔法のようなことですが、本当のことです。経営者は年間計画など立てて来年は2ケタアップの売り上げをめざそう!なんてよくやりますね。掛け声は勇ましいのですが、その根拠となると、正しい数字の裏付けがありません。正しい数字の裏付けがないと、スタッフは何をどうやればいいのかわかりません。そのうち、目標未達の経営目標が当たり前の慣習となってしまいます。スタッフのモチベーションは下がるばかりです。
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ちゃんとした数字の裏付けがあれば根拠のある経営の正しい判断ができるようになります。同時に正しい対策も打つことができます。
たった3%、4%なら、目標数値として手が届きそうですよね。では「客数」3%アップのためには、集客の「内攻め」と「外攻め」をやってみよう(「内攻め」「外攻め」に関しては当ブログのバックナンバーを参照ください)、「客単価」3%アップのためには、クロスセル(サイドメニュー)や店販をお勧めする回数を増やそう、「来店回数」4%アップのためには、賞美期限の説明をして来店日の提案をサロン主導でしてみよう‥‥。
こういうふうに、正しい根拠を示し、正しい対策が打ち出せるわけです。目標を達成するためのやり方が理解できますから、スタッフのやる気も増します。これがモチベーションをアップさせる正しい方法です。正しい方法を知らないで、がんばれ、やる気を出せ、なんてやっているモチベーション専門のコンサルがいますが、そんなところにスタッフを参加させるのは金輪際やめましょう。
今の時代、売り上げを2ケタアップだって?! 誰しも疑ってかかるような目標ですが、数字の裏付けという理屈が理解できれば、理解できて正しい行動に移すことができれば、けっしてむずかしいことではありませんね。わかっていただけたと思います。
経営者が社員の給料を増やすことは大事である。しかし、社員が魂を打ち込んで仕事ができる環境を整えるほうが、さらに大事である。(松下幸之助)
できることから始めるのではなく、正しいことから始めるのです。(ドラッカー)