美容室経営5つのNGとは?
美容室経営において以下の5つのNGがあります。経営者として絶対やってはいけないことです。これをやると、遅かれ早かれ市場から追い出されます。かつて投稿した「中小企業いじめの安倍政権下、絶対やってはいけない4つのこと」と併せ読んでいただきたい。前回の記事は緊急を要すること、今回は重要なこと。つまり、今回の5つを加えると9つになります。
では今回――その絶対ダメな5つのNGとは?
[1] 過大な設備投資
[2] 広告宣伝費の肥大化
[3] メニューの多様化
[4] 技術・知識に溺れる
[5] 本末転倒
大事なことですので、1つテーマにつき1回ずつ説明します。5回の連載となります。お付き合いくださいね。
「ROI」を知らなきゃ倒産まっしぐら
[1] 過大な設備投資
あなたはROIという言葉をご存じだろうか。Return On Investmentのそれぞれ頭文字を取ったもので「投資収益率」を表します。お店の開業時に使用した費用に対し、それを何年で回収できるかを明らかにした数字です。
不思議なことに、他の業種の商店主などは知っていても、理美容の経営者はほとんど知らないROI。無謀としか言いようがありません。
ROIの計算方法は、1年間の営業利益を開業費で割って算出します。簡単ですからやってみましょう。
たとえば、開業費が2000万円で、年間の営業利益が400万円の場合、
(営業利益)400万円÷(開業費)2000万円×100(%)=(ROI)20%
開業費の回収機関は
100(%)÷20(%)=5
つまり開業費の2000万円は「5年で元が取れる」ということです。
ですから、この5年間の期間をもっと短くしようと思ったら、開業費をなるべく安く抑えるか、営業利益をなるべく多くするか、です。
逆の場合もそうです。開業費が多くなり、営業利益が少なくなれば、回収期間がそれだけ長くなります。これでは経営は安定しませんし、次の展開(たとえば支店展開)を考えたとしても、金融機関は融資を渋るでしょう。
巨艦店舗を出してSNSで自慢げに写真入りで公開している経営者を見かけますが、はたしてROIをしっかり計算したうえで開設しているのでしょうか。疑問に思います。過大な開業資金で潰れてしまったサロンを多く知っています。まさに無謀な出店です。まして今のような激戦の時代と人口減少の時代に過大な開業資金を回収するのは困難です。
ROIを逆算して必要客数を知る
さて、もっと「ROI」の中身を見てみましょう。
開業費2000万円の場合、それを5年で回収する計画ならば、400万円の営業利益が必要なことはすでに述べました。
ここで営業利益率を10%と仮定すると、年間の売上高は4000万円必要になるということです。
では、4000万円の売上を実現するために、月ベースに直すと
4000万円÷12カ月=333万円
333万円の売上を見込むために、単価が7000円とすると 333万円÷7000円=476人 つまり476人の集客が必要となります。
さらに3カ月に1回の来店サイクルとして 476人×3ヶ月=1428人 1428人の総客数を確保しなければならない。そのための集客方法はどうする、必要スタッフ数は何人が最適か。
そんなことを、できるだけ詳細にシミュレーションしていくことです。
サイゼリヤの例
ここで異業種の例を取り上げます。
あの好業績を続けるサイゼリヤです。サイゼリヤでは新規出店する際に、ROIが20%を達成できるかどうかを重要な判断の指標にしています。つまり、5年で開業費を回収することが鉄則です。
このROI20%を達成するために、サイゼリヤでは他にも指標となる数値を設定しています。
その1つが、1店舗当たりの売上高が1億円以上です。
そして営業利益率は10%以上、1店舗の開業費は5000万円が目安です。
営業利益=売上高1億円×営業利益率10%=1000万円
ROI=営業利益1000万円÷開業費5000万円×100%=20%
5年で初期投資の開業費を回収する根拠となる数字が示されました。さらにサイゼリヤでは、営業利益率10%を実現するために、売上とコストの配分モデルを作っています。
売上高 100%
原価 40%
粗利益 60%
人件費 25%
設備費 20%
その他 5%
営業利益 10%
サイゼリヤの儲けの仕組みはこんなところにも確立されているのですね。
ROIの裏付けがないままに、店装メーカーやディーラーの言われるままに、仲間内での自慢も手伝って、度胸や勘や根性でエイヤーッと見切り発車する時代はとっくに終わっています。
結論を言います。理美容室を出店する場合、20坪以下が賢明ですね。今の時代、小規模での店舗展開こそ経営者が取るべき道です。
経営とは一面、科学でもあるのです。しっかりとこの「ROI」を考え方のベースに据えて、安定経営、儲かるサロンづくりのために、出店計画、独立開業計画を立ててみる。さもなければ、開業資金の借入を返済できずに倒産という現実が目の前に待っていると思って間違いないです。
次は「[2]広告宣伝費の肥大化」をやります。
暗闇はなく、
無知があるのみ。
(シェイクスピア)