名選手 名監督にあらず
親戚に不幸があり、通夜、告別式と連チャンでブログを書く時間が取れませんでした。ことは単純に運びません。通夜の最中に悲報が飛び込んできて、実家の隣の家のご母堂が急逝したと。葬儀の掛け持ちでてんやわんやの大忙し。そういえば先週は親しい人の、これまたご母堂の逝去。身近で人が次々に亡くなっています。
せめて来年のオリンピックまでは生きていてほしかったと慚愧(ざんき)の念と悲しみに浸りながら、そんなわけでここのところスケジュールが狂いっぱなしの SUZU MASAなのです。
でも、気を取り直して、やりましょう!
【4】技術・知識に溺れる
美容室経営5つのNG、今回は【4】技術・知識に溺(おぼ)れる です。
まぁ美容師さんは技術職ですから技術に一生懸命になるのはわからないではありません。私も編集というクリエイティブな世界に長くいましたから、職人の気質はよく理解できます。
しかし長い間業界にいて、いろいろな人の栄枯盛衰を見てきた経験から言えることは、技術は第一線で活躍しながら経営でも成功しているという人は滅多にいません。昔、技術のカリスマと言われ一世を風靡した人たちは、ことごとく業界から消えていきました。業界の表面から消えるだけならいいのですが、その後の消息さえ不明という人は結構多くいます。
それだけ、技術で溺れる経営者は成長の限界を迎え、やがて消えていく。これが結論です。まだ技術者として第一線で頑張ってちゃんと業績もいい。そんな人は必ず陰の優れた参謀がいるものです。経営者であるなら、技術のスターになり続けるな。見切りをつけてハサミを置き、経営者に徹しなさいと言いたいですね。
それほど経営というのは、技術とはまったくの別物で、生易しい仕事ではないと断言できます。まさに「名選手、名監督にあらず」ですね。これはピーターの法則という、ちゃんと実証された法則があるのです。
まして、経営の知識もないままに経営者になってしまった人が大半ですから、必死に名実ともに経営者に脱皮しなければなりません。言うまでもないことですよね。
問題なのは知識に溺れる
問題なのは「知識に溺れる」ことです。
自分に自信がない人に限ってブランド物を身に付けたり高級外車を乗り回したりしますが、それと一緒。経営者としての自信がないため、遅れてなるものかとビジネス書を読み漁り、各種セミナーに入り浸る。
もちろん、知識の仕込みは大事です。否定しません。
なるほどいい話を読んだ、聞いた、でも行動しない人が圧倒的に多い。いくら知識を詰め込んだって行動しなければ結果はゼロ。はっきり言って頭でっかち。知っていることだけで安心してしまう。
話をしていて、経営用語を知っている、さらに最新のマーケティング用語さえ守備範囲に入っている。ああ、この人勉強しているなと感心するのですが、業績となるとさっぱり。そんな人をここのところ多く見かけるようになりました。
そういう人の特徴はこんな典型的なパターンを繰り返します。
考えて終わり。いつまでたっても行動に落とし込めないのですね。なぜなら、まだまだ自分の知識に自信がない、だから行動しても失敗するんじゃないか、という恐怖心があるからです。知識が足りないと思うから、またビジネス書を読む、セミナーを受講する。そして、行動しないで考えてしまう。この繰り返しです。
そんな悠長なことをやっていていいんですか?と言いたい。なぜなら、次の繁栄の種子を見つけないことには、事業は衰退していくばかりなのですから。
一部の人口増加地域は別にして、人口減少の時代、ということはお客様の絶対数が減っていくばかりの市場の縮小。縮小するならばそれに比例してサロン数も減っていくのが正常なあり方ですが、反対に増えているという異常事態ならぬ狂気の事態。多くのライバル店と同じようなメニュー構成、営業時間、技術料金、集客の仕方をしていても勝てない、生き残っていけない。小学生でもわかる理屈です。
同じような営業スタイルから少しでも早く抜け出せなければ、この血みどろのレッドオーシャンの海に溺れるばかりです。だから、他店を抜き出るタネを見つけて、土壌を整え、水をまき、堆肥を加え、育て上げなければならない。そう、行動しなければなりません。
やってみなければ結果はゼロ
なので、結果が出る人の典型的なパターンは次の通りです。
知って、理解して、やってみなけりゃ何も始まらないということです。
けっして失敗を恐れてはなりません。あのユニクロ創業者である柳井正氏は「1勝9敗」だと明言しています。失敗続きの柳井氏が1つの勝ち、つまりユニクロの成功を導いたのですから。結果を出すのはそんなに甘いものではありません。でも、行動しないと結果はゼロであることも厳然たる事実です。
どうせ新しいことをやるなら、イノベーションを起こす気概でやりましょう! いや、精神論で言っているのではなく、業界は今、イノベーションが待ち望まれていると言っても過言ではありません。なぜなら、このままの状態で推移するなら、矢野経済研究所の過去の推移を見る限り、あと5年で500億円の市場が失われてしまいます。年商1000万円規模の理美容店で5000店舗が市場から消えていきます。
いや、これだって甘い予測でしょう。特に地方では加速度的に人口が減少しているからです。「後継者がいない」と答えた80%のサロンを加えると、厚労省のデータ(美容の店舗数25万店)を信じ、また経産省の衝撃的なレポート「中小企業の127万社が廃業の危機」から類推してみれば、美容室では今後5~10年後、おそらく20万店が消滅する危機にあると計算上は出てきます。よほどのM&Aによって買収されない限りは。オドロキですね、にわかには信じられない数値ですよね。
でも、「君子は最悪を想定して楽観的に生きよ」です。最悪を想定して何らかの対処をする、そのほうが身の処し方としては安全です。
だから、イノベーション! どうやってイノベーションを起こすのか?
業界に画期的なイノベーションを起こした2社のお手伝いをした実績から、私はイノベーションの起こし方を熟知しています。よろしかったら、私のブログの人気記事「イノベーションはこうやって起こす」を一読を。読むだけじゃなくぜひにと思われる方はご相談を。
だからといって成功する保証はありません。成功する確率は経験者の知恵を頼りにするほうが高くなるとだけお伝えします。
次回は、「美容室経営5つのNG」シリーズのいよいよ最後、「本末転倒」をお送りしますね。
「リスクの有無を行動の基盤としてはならない。
リスクは行動に対する制約に過ぎない。」
(ピーター・ドラッカー)「私は失敗を受け入れることができる。
しかし挑戦しないことだけは許せないんだ。」
(マイケル・ジョーダン)「分不相応の志を持つ者だと笑われることを畏(おそ)れてはならない。
無謀な挑戦をしなくなる己れの老いを畏れよ。」
(孫正義)