「問題意識」を持てとよく言いますが、問題意識とは、「問題発見能力」と「問題解決能力」のことを言います。この2つの能力が備わって初めて問題意識が生まれます。
問題解決能力はある程度の最適解が巷に溢れていますが、こと問題発見能力に限ってはとにかく弱いと感じています。
逆に言えば、問題を発見さえできれば、最適解はネットなどすぐ手の届くところにある便利な時代だとも言えます。
問題発見能力が弱い
日本の企業はおしなべて問題発見能力は弱いと言われていますが、サロン業界においては、経営者レベルでさえ、何が問題なのかわかっていない人が多いように思います。
物事の現象面にとらわれ過ぎているのが原因なのでは、と思います。
例えば、スタッフの離職が多いという現象。
なんとかしなければ、という思いばかりが先走って、どこぞのモチベーションを標榜する団体や本を買い求めたりしますが、それらは表面的な対処療法にしかすぎません。手に入る情報が多ければ多いほどますます困難な事態に直面してしまいます。何がなんだかわからなくなる。
暗中模索、五里霧中‥‥
そうではなく、表面的に表れるその奥にある「根本原因」を探ることです。
これが問題発見の真髄です。
多くの場合、それは“やりがいのなさ”に起因します。
ではその“やりがいのなさ”はどうして起こるのかというと、「仕事をやる意味が感じられない」という根本の原因に行き着きます。
リクルートキャリアの「働く喜び調査」によると、「働く喜び」を感じている(「非常に感じている」「感じている」の合計)と答えた人は全体の14%しかいません。およそ8割から9割の人は、自分の仕事を「どうでもいい」と考えており、「意味」や「やりがい」を見いだせていないことがはっきりしています。
つまり、現代の企業社会にあっては、モチベーションが希少化していると見て間違いなさそうです。
これが問題発見能力です。
問題発見能力が正しければ、仕事の意味を与えないまま、ただがんばれとハッパをかけてもスタッフの心には届きません。虚しい言葉としか聞こえません。
目標設定をして生産性を高めようと目標管理の手法をいくら駆使しても、スタッフの気持ちに火をともすことはできません。
やればやるほどスタッフの気持ちは冷め、やがてついていけない、こんなはずじゃなかったと離職へとまっしぐらに突き進んでいってしまいます。
ミッションを策定する
では、問題点は正確に発見した、次の解決策は?
究極にはたった1つしかありません。
それは、あなたの生き様をさらすことです、全スタッフの前で。
あなたの生き方、つまり「ミッション」です。
ここまで理解できれば、ミッションの策定の仕方、社員に浸透させる方法など、巷には最適解が溢れています。
ですから、正しい問題発見能力こそ、その組織にとって欠かすことのできない最重要な能力といえるのです。
ここでシャンシャンと終わりにしてもいいのですが、そこまで言うならあんたの考えを聞かせてくれよという意見もあるかもしれません。
そこで、あくまでも私見にすぎませんが、述べてみることにします。
ミッションとは、こんなにもサロンの店舗数が多いなかで、「あなたのお店が存続できる理由(存在意義)を指し示す」こと。これに尽きると思います。
なぜなら、その理由があなたの生き様であるからです。1億人の人口がいても、あなたがあなたでいる理由、それが他の人に代替不可能な、かけがえのない、あなた独自の生き様であるからです。
生き様をストレートに反映させた言葉が「ミッション」。
誰ですか、他からの借り物のミッションを掲げている人は?
これは他人の人生を生きることに等しい、自分の人生への冒涜行為ですよ。
代替不可能なあなた自身の生き様、あなた自身の言葉。
シャンプーひとつとっても、ミッションを反映したシャンプーであるという仕事の意味を与えることです。
カットひとつとっても、カラーひとつとっても、店販ひとつとっても‥‥そうです。どんな仕事の役割分担があろうとも、ミッションによって一気通貫します。ブレはありません。
人事評価にしてもそうです。
ミッションにのっとって仕事をし、たとえ失敗しても賞賛の評価を与えるべきです。
ミッションを踏み外して売上貢献したとしても、厳しい評価をし、なぜ厳しい評価にいたったのか、ミッションにのっとって説明するべきです。
経営資源の中で「人」は最大の資源です。その「人」はモチベーション次第で組織は良くもなれば悪くもなります。
ですから正しいモチベーションに導かれた組織こそ最強の組織といえるのです。
さて最重要の問題発見能力ですが、この能力を高める手っ取り早い方法があります。
あなたのメンター、あるいは尊敬する人に、時間を取ってもらって、表面的な現象面で目に付く問題点を正直に語る機会を設けることです。
あなたの信頼すべきお人なら、きっと現象面の奥にある根本原因の発見まであなたを導いていってくれるでしょう。
一刻の猶予もありません。
すぐ取り組むべきです。
ジェフ・ベゾスの生き様
ここでAmazonのCEOであるジェフ・ベゾスの生き様が企業のミッションとなったいきさつをご紹介しましょう。
ベゾスはAmazonを創業する前は、ウォールストリートで非常に成功したキャリアを持つ人であったということです。そんな成功者がなぜリスキーなベンチャー企業を興そうとしたのか?
仮に自分が80歳になったとして、これまでの人生を振り返って、最も後悔が少なくなるような意思決定をするという「後悔を最小化する思考のフレームワーク」を持っていたのです。
彼が80歳になったとき、もしインターネットという非常に大きな存在に対してトライしたのであれば、仮に失敗したとしても後悔しないと明確にわかっていました。
逆にもし、インターネットという非常に大きな波に対して、何もトライしなかったのであれば、その後、80歳になるまで毎日後悔し続けたであろうとも本人は語っています。
けっして後悔することのない人生を送ること、これが彼の企業家精神であり、その考えを凝縮させた言葉が「世界中で最もお客様を大切にする企業である」というミッションなのです。
お客様を大切にするためには明確な定義があって、なかでもその定義で最重要なことは「お客様の声を聞く」というもので、一見何の変哲もない言葉に聞こえますが、「顧客の声を聞かない会社は必ず失敗する」とベゾスは言い切っているのです。
ベゾスの生き様、それが言葉になったミッション。社員の入社試験の際にも言い続け、何年も続いた赤字決算でさえ投資家の投資意欲を繋ぎ止めていたミッションこそ、今日の巨大企業となったAmazonの目に見えない事業の駆動エンジンでしょう。
さて、あなたのミッションをお聞かせください。
世界中の情報を整理し、世界中の人がアクセスできて使えるようにすること。
(Googleのミッション)
地球上で最もお客様を大切にする企業であること。
(Amazonのミッション)
コミュニティづくりを応援し、人と人が身近になる世界を実現すること。
(Facebookのミッション)