どんどん悪い方向へ
消費増税に新型コロナウィルスの感染拡大で、日本経済は2008年のリーマンショック、2011年の東日本大震災をもしのぐほどの景気の落ち込みの可能性を言われています。
不要不急の外出の自粛は理美容室を直撃します。
イベントや催し物の自粛は経済活動の死を意味します。
特措法の改正で緊急事態宣言の発令は民主主義を破壊します。
どんどん悪い方向へ突き進んでいるのが現状です。
現状は闇夜、コロナの収束はまったく不明で、未来は見通せない。いや、1カ月、2カ月先の需要さえ読めない不安のなか、本当の意味でサロンの真価が問われるときだと思います。
つまり、実力が試されているのだと。そうとらえたほうがいい。
ここでスティーブ・ジョブズの2つの言葉を引用します。
「何をしないのか決めるのは、何をするか決めるのと同じくらい大事だ。」
「人生の中で私が一番好きなもの。それはお金のかからない、誰もが持っている、最も貴重なものだ。そう、時間だよ。」
何をしないかを決める
ジョブズの最初の言葉、「何をしないかを決める」ということ。
不安だからといって、誰かの口車に乗って安易な儲け話に手を出さないこと。
不安だからといって、まがいものの情報、ジャンク情報に飛びつかないこと。
そして、集客のために無駄なコストをかけないこと。
状況が状況だけに悪魔の甘いささやきはいっぱいあります。
新しいビジネスに挑戦するのはいいのです。反対はしません。
ですが、以前から再三発言しているように、自分でわからない市場に多額の資金を投入して参入しないこと。
はっきり言って投資資金の回収は困難です。ましてこんな状況です。新規の集客は困難でリピートも困難です。なぜなら不要不急の外出は避けるからです。
なぜこんなことを言うのかというと、私の身近で多額な設備投資の資金を投入して、よく理解していない市場に参入してしまった例があるからです。
気持ちは痛いほどわかります。業界特有の労働集約型に低生産性、将来を悲観して新しい市場に打って出る。確かに新しいビジネスは労働集約型ではありませんから人件費は抑えられます。ところが膨大な集客コストが発生します。なおかつリピーターがそれほど見込めない。ましてタイミングは最悪です。
運転資金は既存ビジネスから補填(ほてん)します。すると利益が出ている既存ビジネスの体力が弱ります。従業員から不平不満が続出し、離職を引き起こします。
そして間もなく気づくでしょう、美容業のほうがずっと堅実なビジネスであったと。
美容室の良さを再確認するには授業料がかかり過ぎで、元に戻ろうとも、ポイント・オブ・ノーリターン、後戻りができる時期をとっくに超えてしまった。そんな危険性がおおいにあるのですね。
何度も言うように、新規ビジネスを始めるには
- 投資金額はできるだけ少なくする
- 高い利益率が見込める
- 在庫が不要
- リピーターが望める
- 市場を熟知している
- 既存事業との相乗効果が見込める
- ストックビジネスに限る
以上の7つのポイントにマッチしたビジネスならおおいにチャレンジするべきでしょう。
そして、いつでも引き返せること。損失は確定しても、せいぜい数十万、数百万の損失で済むなら引き返せます。
何が成功するかわかりません。まして先が読めない「VUCA」の時代に突入しています。10回チャレンジして1回成功したらラッキーというくらいのフットワークの軽さが望ましいと言えますね。
「社運をかける」? よしてください、そんな悲壮感のあるチャレンジは。
時間を味方にする
次に、ジョブズの次の言葉、「時間」だということ。
こんな時こそお店の一番の資産であるお客様との関係を見直すこと。いや、もっと言えば、お客様との関係をさらに深いものに再構築すること。
どうやって?
それは上位20%のお客様に手紙を出すこと。デジタルではなくアナログで。具体的な1人ひとりのお客様の顔を思い浮かべながら、日頃の感謝を述べるともに感染対策の徹底をアピールし、お客様の不安を払拭することです。
「こんな時期に美容室へ行って大丈夫かしら?」
これがお客様が持つ共通の不安です。
「大丈夫です、当店は感染対策をこういうふうに徹底してやっています、それよりも、〇〇さんの元気なお顔が見たい、内向き下向きになりがちなご気分を当店で発散してください。」
こんな呼びかけです。
そして、こういうときこそビジネスの原点に立ち帰って、自店の存在意義を確認すること。どうでもいい店ではなく、その地域に無くてはならない店であると腹の底から確信できたら、大丈夫、どんな環境変化にも生き残っていけます。
時間はたっぷりあります。時間を味方につけることです。
目先のハウツウや対処療法ではない、経営者の生き様、哲学が試されているときだと思います。
You don’t get to choose how you’ve going to die or when.
You only get to chose how you’re going to live.
―いつ、どのように死ぬかは選べない。どう生きるかを選べるだけである。―
(ジョーン・バエズ)