すでに60~90兆円の減少
昨年10月の消費増税に追い打ちをかけた新型コロナウィルスの感染拡大の影響で、消費が20~30%落ち込んでいるようです。
GDPの6割近くを占める個人消費は現在およそ300兆円ありますが、これが20~30%落ち込むということは60~90兆円の減少となるわけです。
とんでもない額ですね。
上場企業の3月3日時点での業績修正の動向を見ると、50社が業績の下方修正を発表。すでに総額2600億円の売上が吹っ飛びました。
帝国データバンクが、企業に新型コロナウィルスの影響を聞いたところ、6割以上が業績に「マイナスの影響がある」と答えています。
もろ影響をこうむる理美容室
理美容室は、政府の不要不急の外出を避ける、人の集まるところに出かけないとの要請にストレートに影響が出る業種であり、私の周囲から聞こえてくるのは客数の大幅減少です。
こちらは新型コロナウィルス感染の影響が出ない時期で、なおかつ消費税増税の直後の時期に数値をカウントした日本政策金融公庫の「生活衛生関係営業の景気動向調査」2019年度第3四半期(2019年10~12月期)の「景況感のDI」があります。
DIとは、前期(2019年度7~9月期)と比較して、「好転した」から「悪化した」を差し引いた数値です。プラスになれば好転、マイナスになれば悪化となります。
このDIの数値を紹介します。恐ろしい数値です。
【理容業】
売上:-32.4
採算:-7.1
客数:-36.4
【美容業】
売上:-32.3
採算:-10.1
客数:-38.6
理容業、美容業ともにいずれの数値も悪化していて、とくに売上と客数の落ち込みは目をおおうばかりです。
先が見えないのに借金を返すアテがない
ここに新型コロナウィルスが追い打ちをかけるわけです。
そう、だれでも容易に予想できることですが、このままでは悲惨な未来しか待っていてくれませんよね。
景気は良くも悪くもなる。それが過去の景気循環の流れですが、今回問題なのは新型コロナ感染がこれからますます拡大し、治療薬もないまま、収束がまったく見えないということですから、景気は循環しないで下がる一方なのです。
これがかつての大不況、たとえばリーマンショックや東日本大震災のときと大きく違う点です。長引けば長引くほど中小企業を中心に業績の悪化、そして倒産が増えていくことになります。
政府はあわててコロナ対策融資のほか、セーフティネットの保証制度の対象条件を緩和しました。
しかしあくまでも融資です。借りたお金は返さなければなりません。ウィルス感染の収束がまったく見えないなか、たとえ急場をしのげたとしても、状況が好転しない限り倒産の先送りにしかなりません。
美容室の倒産状況
さて、消費増税をした昨年の10月時点から現在(2020年3月6日)まで、ネットで公表されている美容室企業の倒産情報を見てみました。(個人事業者はカウントされていません)
結果は11社ありました。
私自身うっかりしていたのですが、この11社のうち業界で名の知れた美容室が数件ありました。老舗の有名美容室や大型の部類に入る美容室も。うち、過去にお会いした経営者の美容室が2件です。
ある美容室は、美容のほかネイル、メイクアップもワンストップでできることを強みに一時は近畿圏で20店舗を展開し、同時に別会社を立てオートネイルの販売も行って10億円近くの売上を誇っていました。この美容室が最大の負債総額で6億4000万円です。
もうひとつの例が、美容室、レストラン、住宅施工販売、雑貨の複合ビジネスで人気を誇り、業界誌を始めいろいろな媒体でその盛況ぶりが取り上げられていました。そこの負債総額が4億3000万円です。
関連業種として、このほかにディーラーが3件あります。こちらもお会いした経営者が1件です。
今後の状況を見てみないとなんとも言えませんが、これから美容室の倒産は本格化することは間違いないでしょう。ドミノ倒産が起こるかもしれませんね。どことは言いませんが、あの有名大型美容室も倒産を免れないかもしれません。
窮すれば変ず
こんなときは、新たな設備投資の時期ではありません。溺れる者藁をもつかむで、すぐ儲かる話、いかがわしい情報、いたずらに精神を高揚させるセミナーなどに飛びついてはいけません。
この時期、ここの選択を間違えたら大変な目に遭うと断言しておきます。(事実、大変な目に遭っている経営者はたくさんいます!)
そんなことより、じっくりと今までのビジネスのやり方はよかったのか、このままビジネスモデルを変えずにやっていけるのか、猛省の時間に充てるべきです。
もし、そこで疑問が生じたのなら、変えるチャンスと考え直して、生き残るにはどうしたらよいのか、自分の頭で徹底的に考えて考えつくすことです。
中国古典の『易経』にこんな言葉があります。
「窮(きゅう)すれば則(すなわ)ち変ず、変ずれば則ち通ず」
つまり、窮すれば窮するほど知恵が出て、いままでのやり方や考え方を変えざるを得なくなる。変えて始めたビジネスは結局はうまくいく、ということです。
良く言われるところのパラダイムシフトですね。
真っ当な危機意識をしっかり持って、頭に汗をして考えに考えるという真剣さがあれば、やがて好転するための最適解が思い浮かぶ。それは結果として市場を変えることであり、新たな顧客を創造することでもある、つまりイノベーションを起こすという未来創造につながることになるかもしれません。
私は無責任な評論家のように責任逃れはしません。
言った以上は自らの言葉に責任を持つべく、この絶好のタイミングで新しいことを始めます。
それはグループ・コンサルの開催です。間もなくスタートします。
関心のある方のご質問や疑問、あるいはご相談など、なんでも結構です。以下のメールアドレスへご連絡を。↓
窮すれば則ち変ず、変ずれば則ち通ず。
(易経)