ビジョンとは?
従業員のモチベーションを鼓舞し、一体感を醸成し、その後の戦略策定にぶれることなく確実な方向性を示すもの、それが「ビジョン」です。
こういうコロナ禍においても好業績を挙げ続ける企業は、いずれもこのビジョンがしっかりと策定されていて、日常業務に活かされています。
ということは、掲げたビジョンが従業員に浸透し、行動の指針になっているものであるか、そうでないかがはっきりとしたのがコロナ禍であるといっても過言ではないでしょう(ビジョンが策定されてないのは論外です)。とくに経営者だけが満足して、従業員が納得していないビジョンは絵に描いた餅なのですね。また美辞麗句ばかりを並べたビジョンは偽善の臭いがぷんぷんします。
ビジョンとミッションとの違い
本題に入る前に、ビジョンと似たようなものに「ミッション」があります。双方の違いを明確にしておきましょう。
ミッションについては過去の私のブログで何度も語っています(「経営とは経営者の生きざま」「なぜあなたの言葉は届かないのか」「モチベーションの高め方」)。
ここで補足する意味であえて双方の違いを述べるとすれば、ミッションは「目的」「存続意義」「使命」といったものです。つまり、「私たちはなんのために存在するのか」を定義したものです。
ビジョンは、ミッションで掲げた存在意義や目的、使命の実現を目指す、夢、目標、志、方向性といったものを示すもので、組織が目指す将来の理想の姿を表現します。
わかりやすく『桃太郎』の寓話にたとえていえば、こういうふうになります。
■ミッション=村に平和を取り戻す
■ビジョン=鬼を退治する
ミッションはどちらかと言えば抽象的で長期的視点でのイメージ、ビジョンは具体的で中期的なイメージです。
ミッションとビジョンを策定し掲げることによって、企業としての姿勢が明確になります。ミッションとビジョンは企業の軸、背骨として機能し、今回のコロナ禍のように深刻な事態が引き起こされても、一時的には翻弄されるかもしれませんが、すぐに原点であるミッション、ビジョンに立ち帰ることができますから、迷走することはありません。
ちなみにGAFAのビジョン
そこで「ビジョン」です。世界的に急成長を遂げている企業のビジョンを紹介しましょう。
2020年4月に衝撃的なユースが舞い込んできました。GAFA+M(Mはマイクロソフト。GAFAとはグーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)の5社で日本の東証一部上場企業2169社の時価総額を上回ってしまったというニュースです。逆に日本企業の停滞ぶりがはっきりしたということにもなるのですが、GAFAのうちの3社(アップルはビジョンを公に発表してなくて、すべてはスティーブ・ジョブスの発言から推測するしかありません)と日本のファーストリテイリング(ユニクロ)のビジョンをご紹介しましょう。
■グーグル:ビジョン「ワンクリックで世界の情報へのアクセスを提供すること」
■アマゾン:ビジョン「地球上で最もお客様を大切にする企業であること」
「お客様がオンラインで求めるあらゆるものを探して発掘して、出来る限り低価格でご提供するよう努めること」
■フェイスブック:ビジョン「世界の絆を強める」
■ファーストリテイリング:ビジョン「服を変え、常識を変え、世界を変えていく」
いかがですか。
いずれも、わかりやすくて簡潔で魅力ある表現ですよね。
企業は利益を追求しなければ生き残っていけないのに、ホンネを隠して慈善事業のようなビジョンを掲げる企業がありますが、偽善臭が漂って誰からも信用されません。
あるいは、「私たちはすべての人に夢と希望を差し上げたい」といった浮ついた抽象的過ぎる表現、または、「私たちはかかわる人たち全員に幸せを提供できるよう、刻苦勉励、寝食を忘れて業務にまい進し、顧客に最大の価値をお届けします」なんてブラック顔負けの大言壮語を奮発しても、虚しさしか感じられません。
人間は自分の考えたとおりに生きることが最大のモチベーションとなっています。この「生きる」を「経営する」に置き換えれば、考えたとおりに経営するためには、人間の性質に根差した高潔で魅力に満ちた「ビジョン」が必要です。
しっかりとした明確なビジョンが従業員のみなさんの血となり肉となって行動にブレがなければ、コロナ禍なんて恐れるに足らずでしょう。
ビジョンは従業員のモチベーションの源泉です。お客様はワクワクし、さらに銀行や取引業者などのステークホルダーはビジョン実現のための協力は惜しまなくなります。
あなたはどのようなビジョンを掲げていますか?
もしビジョンを掲げていなかったら早急に策定してください。経営の原理原則です。
できることから始めるのではなく、正しいことから始めるのです。
(ドラッカー)