実学に役立つ「哲学」
私が発想をしたり物事を考えるうえで、常に重要な背景にあるのが、哲学です。
といっても、人生哲学といったり、経営哲学といった、便利で安直に使用されるものではなく、純粋に学問としての哲学です。
もちろん学問とはいいながら、実学として役立たない学問のことではありません。そんなもの、経営者にとって無用の長物です。
では、哲学はどうやって実学に役立つのかと問われれば、そこには「世界観」があるからだと答えます。
たとえば「経営」という言葉の発祥はもちろん中国で、人や物を適切に配するという風景画の画法から来ているのだそうです。
これを経営のリアルに当てはめてみれば、人・物・金という重要な経営資源をバランスよく配して、事業を永続させるための適正な利益を得る、というふうに応用できます。
反対に、バランスよく配することができなければ、目指す利益は得られない、よって事業は継続できないということになりますね。
こういうように発想や考え方の背景に哲学があれば、独自の世界観が形成でき、またその世界観を第三者に説明するには言葉が必要となります。ミッションであったり、ビジョンであったりは、そんな世界観から生まれたものであるかぎり、揺るぎはありません。
おススメの入門書3冊
というようなわけで、私が敬愛してやまない哲学者はカント、バタイユ、西田幾多郎です。
カントとバタイユ、西田幾多郎の入門書として、参考までに以下の代表的な3点を挙げておきます。
・カント『純粋理性批判』(少々難易度高め:平易なマンガ版があります)
なかでもカントは、こう言っています。
人間を「手段」として扱うのではなく、「目的」として扱えと。
個々の人格を尊重し合う社会が形作る“目的の王国”こそ理想の社会(組織)であると。
組織づくりニューパラダイム!
今、組織マネジメントがさかんにいわれています。従業員を単なる目標利益や売り上げを達成するための手段と考える無慈悲で硬直的なマネジメントの行き着く果ては、ごりごりの成果主義です。成果の上がる人にとっては給料もたくさんもらえていいですが、成果が挙げられない人は面白いはずがありません。やがて、できる人・できない人との分断が起こり、冷たいぎすぎすした人間関係となって、従業員のモチベーションは枯渇し、離反が始まります。お客さまも居心地が悪くなり離脱していきます。
だいたい人時生産性2000円、労働分配率60%として時給1200円が支給限度額といった美容業界の給与の現状と、新人入社1年後の生存率50%といった現状は、すべてマネジメントの失敗です。はっきり言って、手段と目的をはき違えたマネジメントが原因です。
そうではなく、従業員の幸せ追求を目的ととらえると、180度違ったマネジメントの考え方が出てきます。それはティール組織であったり、U理論やOKR手法の導入であったりします(U理論やOKR手法については別の機会に解説します)。
今こそ組織の作り直しのチャンスです。マネジメントのパラダイムシフトが起こりつつあります。
そんな世界観の下、業界にはまったく先例がありませんが、クライアントさんと一生懸命、新たな組織マネジメントの構築に取り組んでいるところです。
最後に偉大な経営者にして哲学者であるジョブズの言葉を載せておきます。
世界を変えられるって
本気で思い込めるのなら、
本当に世界を
変えられるんだよ。