売上よりも利益が大事
コロナ禍の今、大事なのは売上よりも「利益」であるということを再認識できたことが、コロナ以前との大きな違いでしょう。
売上至上主義というのは、高度経済成長期やバブル経済期に出来上がった神話と言っていいでしょう。
利益が出なければ会社は存続できません。この当たり前のことが再認識されたと。
ここで、利益はいかにつくられるのか、また、希望する利益はどうやって実現できるのか?
それには会社の「お金の流れ」を理解していくと簡単にわかります。
当業界の経営者は数字が苦手、お金の流れの仕組みがわからずに将来に漠然とした不安を抱えている人があまりにも多いというのが実感です。
この方法は、私自身が資金繰りに苦しんで、苦しんで、苦しみ抜いて体得した独自の経験がベースとなっています。そこに会計の知識を総動員しました。いわば「筋金入り」の方法で、会計の専門家である税理士さんでも知りません(笑)。
今回のブログは、この数字への苦手意識を払拭し、どんぶり勘定を脱して、簡単にお金の流れが把握でき、数字に強い経営者になっていただきたい。そんな思いから書きました。
だいたいにおいて、お金の流れがわからないと経営にはなりませんからね。なるほど、そうか、と納得していただきたく、詳しく解説したい(といっても内容は簡単)ために、[前編]と[後編]に分けてお届けします。
ではさっそくやってみましょう!
高い粗利益の意味
ここでまず損益計算書(P/L)の最初に出てくる「粗利益」に注目しましょう。
理美容室はこの粗利益率がダントツに高い。だいたい85~90%の粗利益率ですよね。
こんなに粗利が高くてなぜ儲からない? という話はさておくとして、この粗利益率は別名「付加価値率」と言います。
粗利益率が高いということは、それだけ付加価値が高いということです。
たとえば卸売業を考えてみましょう。卸売業は粗利益率が最も低い業種の代表です。当業界ではディーラーがそうです。業務用品をメーカーから仕入れて美容室に納めます。商品に何も手を加えない、つまり価値を付加しないので、ディーラーの粗利益率は低く、15~20%程度です。
ところが美容室は粗利益率が90%程度ととても高い。つまり、医師と同じように、それだけ高度な専門技術や専門知識で価値を付加しているからです。
この辺のプロとしての価値を再認識したほうがいいですね。安売りをするなんてもってのほかで、値決めのポイントは、だから「ギリギリの高値」。
あの稲盛和夫氏が言うように、「値決めは経営。ギリギリの高値に設定する」のです。
次に注目するのは「税引き後利益」です。正確には「税引き後利益+減価償却費」ですが、話がややこしくなるので「税引き後利益」だけに着目してください。税引き後利益はこういう見方をします。
・利益が出れば利益剰余金として会社に資金をプールできる(内部留保)
・利益が出ていなかったら借入金の返済はできないわけで、別の資金繰り対策が必要(その方法はいろいろあり。応相談)
・利益金の金額で借入金トータルの金額を何年で返せるかわかる
・だいたい5年返済とか7年~10年返済とか返済期間が決められているので、その期間内に返せるかどうか目途が立つ
・ところが大抵のケースで返済はできない。今回の緊急融資の返済が始まったら、なおさら資金繰りに窮する
そこで「先読み会計」をします。
希望利益を実現するための逆張り発想
鉄板の公式はこうなっています。
●売上-経費(変動費+固定費)=利益
ですから、検討する項目は次の5つです。
- 売上
- 粗利益
- 固定費のなかでも人件費(労働分配率)
- その他の固定費
- 利益
※「労働分配率」とは粗利益に対する人件費の割合
・上に挙げたそれぞれの項目を、売上高を100%としてそれぞれの割合を求める。
・美容室の場合、TKCの経営指標(BAST)から、目安となる平均値をお教えしましょう。
- 売上・・・・・・・・100%
- 粗利益・・・・・・・87%
- 人件費・・・・・・・50%(労働分配率56%)
- その他の固定費・・・33%
- 利益・・・・・・・・4%
これがあくまでもTKCという全国横断の会計事務所がカウントした美容室の平均値です。
利益がたった4%とは問題です。3000万円の年間売上があっても利益は120万円に過ぎません。税金が30%かかったとして80万円程度が借金返済の原資です。月商のおよそ3倍は貸してくれますから、少なく見積もって500万円借りたとして月10万円の返済です。1000万円借りれば倍の20万円です。
現実問題として‥‥返済できません。経営者の貸付金で間に合わせているのでしょうか。いずれにしても苦しい資金繰りが強いられます。
もちろん会社にお金は残りません。
でも、あくまでもこれは美容室の平均値です。赤字決算の場合は、さらに資金繰りが苦しく、会社の存続さえ危ぶまれます。
では、どうするのか?
そこで希望する利益を出すためにどうするのかという「逆張り発想」をするのです。
上に挙げた5つの項目のどこを重点的に改善するのか。あるいは全体的に少しずつバランスよく経費圧縮するのか。または、売上を何がなんでも上げて、同時に経費の削減をはかって利益を最大化するのか。
そういうことが見えてくるのです。
そして次回の[後編]では、実際に数字を当てはめていって、目指す利益を実現するための方法を簡潔に解説したいと思います。ご期待ください。
「マーケティングを最も短い言葉で定義すると、『ニーズに応えて利益を上げること』となる。」
(コトラー)