まさに本が立ち現れる
本屋へぶらりと立ち寄ったときに、ある雑誌の特集のタイトルが気になって衝動買いをしてしまいました。
まぁ、ネットでの購入が当たり前となりつつあるなかで、私はずっとリアル書店体験をしています。本屋さんへぶらりと立ち寄り、そこで気に入った本や雑誌に出合えることを無上の楽しみにしている、典型的昭和な人間のリアル店舗めぐり、これを旨としています。
私のように本との付き合いが長くて、その読破した数も半端ないというほど自慢できるまでになったのですが、ある種の言葉では説明できないほどの、本がまさに私の現前に立ち現れてくる、そんな現象が頻繁に起こるのですね。これが本屋さんでのいつもの体験なのです。
「あ、この本が読んでくれって訴えているな」
そんな本の主張を感じ取ることができるのです。もちろんそうやって手にした本は、いまだかつて1冊も私を裏切らないのです。摩訶不思議、言葉にならない。
まさに本とは、出合うべくして出合う!なのです。
意外にも、本好きな人、そしてリアルな書店巡りを愉しみにしている人には、共通の体験であるらしいですね。本好きなあなたはどうですか?
パーパス・ブランディング
そこで今回の出合いは、雑誌の『Harvard Business Review』10月号でした。特集のタイトルは「Purpose Branding パーパス・ブランディング」です。
コロナ禍の現在をどうやって生き延び、アフターコロナにおいてもどうやって生き抜いていったらいいのか。それには、なによりもまず現在の事業の徹底した深掘りが欠かせないのだろうとは思っていました。
そして、事業の深掘りをする際に最重要となるベースが「ミッション」であるだろうということも。
そこで、「パーパス・ブランディング」なのですね。パーパス・ブランディングについて、リードの説明文ではこう記されていました。
「新型コロナウィルス感染症の影響により、景気が悪化し消費も低迷する中、どうすれば消費者から選ばれる会社であり続けられるのか。いま、これまで以上に企業の存在意義が問われている。社会的使命とビジネスをいかに両立させていくか、そのために何をすべきかについて考える。」
そして、サブタイトルが「そのビジネスは何のために存在するのか」「どうすれば社会に貢献できるのか」。
つまり、ミッションが問われているわけです。とりもなおさず、自分の会社(自店舗)は何のために存在しているのか、どうすれば地域社会に貢献できるのか? まさに会社の存在意義、つまりミッションそのものであり、時代はミッションでの勝負になってきたと言っていいと思います。
スターバックスのミッションとは?
特集の中で取り上げられている、なかでも「スターバックス」のミッションには大いに啓発されましたので、その概要だけでもお知らせしたいと思います。詳細はぜひ雑誌をお読みいただけたらと思います。
ご多分にもれずスターバックスも新型コロナ感染症の拡大を受けて、国内に展開している1200店舗を約1カ月半にわたって休業したそうです。そして店舗再開のとき、その日を待ちわびていたお客から「久し振りで涙が出た」「日常を戻してくれてありがとう」といった多くの声が届いたということです。
なかには、こんな手紙が届いたことも。
名古屋の店舗を利用していたお客の一人から届いた手紙で、そこにはこんな文面が綴られていました。その人は奥様を亡くして家にこもりがちだった。「これではいけない」と思い直して、アロハシャツを着て来店したのですね。
そのとき、店員から「キレイな色のシャツですね」と声をかけられました。
その男性は「自分を見てくれているスタッフがいた」と。妻という自分を常に見てくれた存在を失った直後に聞いたこの一言が、なによりもうれしかったに違いなく、感謝の手紙をしたためたということです。
感動の手紙ですね。
スターバックスのミッションにはこうあります。
「人々の心を豊かで活力あるものにするために――ひとりのお客様、一杯のコーヒー、そしてひとつのコミュニティから」
まさにこのミッションが体現できた事例でしょう。お客様の心を豊かにし、活力を与えるにはどうすればよいのか。ミッション実現のためには、一人ひとりに応える接客、サービスを提供することは欠かせません。
「スターバックスは単にコーヒーを売る企業ではなく、最高の顧客体験を提供する企業であるべきだからだ」ということですね。
ミッションで勝つ!
スターバックスには接客マニュアルは存在しません。なぜなら、パートナー(従業員をこう呼ぶ)の熱意と創意工夫はマニュアルの枠に収まるものではないからだと。でなかったら、「キレイな色のシャツですね」なんてマニュアルにないことは言えませんよね。そのために人材育成には多くの時間と資金を投じています。
スターバックスの売り物は「人」なのですね。だから、広告宣伝費はほとんど使っていない。なぜなら、「人」がブランドそのものだからです。
コロナ禍の現在、既存事業の深掘りが大事だと言われています。なぜなら、そこでしか究極の差別化ができないからです。既存事業のおおもと、ベースとなるミッションこそ、究極の差別化となるエッセンスがつまった源泉です。
あなたの会社(お店)のミッションはどのようなものですか?
スターバックスのように、ミッションで集客し、ミッションで最高の顧客体験をしてもらい、ミッションで顧客とのコミュニティを形成する。
ミッションで人を採用し、ミッションで育成する。
ミッションで人とともに会社も成長する。
そう、ミッションでビジネスを勝ち抜くのですね。なぜなら、ミッションこそ最高のブランドであるからです。
「明日の社会をつくっていくのは、あなたの組織である。そこでは全員がリーダーである。ミッションとリーダーシップは、読むもの、聞くものではない。行うものである。」
(ドラッカー)