原理原則とは?
経営は原理原則で成り立っています。原理原則を忘れたとき、経営は破たんします。
では、原理原則とは何か、ということです。
さっそく説明しましょう。
原理原則とは、こういうことです。
たとえば、儲け(利益)とは、お客様の満足の総量です。何人のお客様に満足をしていただいたのか。これがすべてです。
ですから、満足よりも不満足しか提供できなかったとしたら、利益は出ません。業績はマイナス、赤字となってしまいます。つまりお店をたたむしかありません。
これが儲けの原理原則で、お店を維持発展できる原資です。
顧客満足の原理原則
満足は価格の設定にも表れます。こういう公式が成り立ちます。
満足=価値>価格
不満足=価値<価格
支払った価格(料金)以上の価値を受け取れば満足です。反対に、受けた価値以上の価格だとしたら不満足を覚えます。
ですから、価格(料金)というのは、絶対的な安い・高いという基準はないということです。受けた満足の度合いによって、満足か不満足かが決まるのです。つまり、個人個人の相対的な価値によって決まります。
ということは、いかに満足する層を特定し、集客し、満足する価値を提供できるかが経営となります。
この原理原則を忘れると、価格だけに目が行って、価格競争の消耗戦に突入します。なかには消耗戦をいかに勝ち抜くかというコンサルタントなども出没していて、どんどん利益の残らない悲惨な状況に陥っています。
どの業界かって? 美容業界のことですよ。
こうやって美容室の売上が、ここ5年間で500億円以上失われ、失われたお金がどこへ行ったかというと、大手集客サイトにです。大手集客サイトに500億円の売上を、貢ぎ物のように美容業界全体で捧げているのが現状です。
ですから、原理原則をわきまえれば、価格以上の満足をお客様に提供できるのはどうしたらよいか、との健全な思考ができるのです。
同業他店みんなと一緒なんて発想ではなくなります。いかに自店の独自性を打ち出していったらよいか。そういう思考の習慣づけが、新たな価値の創造につながる、あなた独自の業態を開発する原動力となるのです。
従業員満足の原理原則
次に、従業員満足についての原理原則です。
従業員が満足して働かなければ、望む利益は出ません。利益とは顧客満足の総量ですから、従業員が満足して働いていないお店ではお客様も満足しません。
まして理美容業のように、人によって始まり、人によって継続し、人によって終了する、100%人的サービス業であえばなおさらです。
ブスッとしていて愛想のひとかけらもない人に接客してもらったら、お客様は悲劇です。満足どころか、不満足しか残りません。いや、それどころかクレーマーの発生となってしまうかもしれません。
だから、儲からない。原理原則です。
では、従業員満足を実現するにはどうしたらよいのか?
経営者なら例外なく悩むところです。
そこで、従業員満足の原理原則です。
それは「物心両面」で初めて満足は実現できるということです。物心の「物」とは、給料をベースにした労働条件の満足です。長時間労働、有給未消化、低賃金では従業員の満足は得られません。
けっしてここを勘違いしてほしくないのです。勘違いするというよりも、原理原則がわかっていないで、モチベーションを標榜するコンサルタントに従業員のモチベーションアップを丸投げしないでほしいのですね。
モチベーション・コンサルタントは、「物」の裏付けがなくて「心」だけでアプローチをします。やれ、がんばれだの、時に恫喝、そして互いに褒め合って涙を流す、などの心=精神論のパフォーマンスに終始します。
確かに従業員はそのときはモチベーションに火が点いてやる気になるのですが、数日でモチベーションの火は消えます。なぜなら、モチベーションを維持できるだけの背景、つまり仕組みである「物」がないからです。
これでは持ちません。従業員は疲弊するばかりで、離職につながってしまうのです。私が見聞きしたなかで、こういう例はとても多いのですね。
長年、多くの経営者と真剣な出会いを繰り返してきて言えることですが、理美容業界ほど、この経営の原理原則に無頓着な業界はないと思うのですね。
知らないし、知ろうともしない。
その反対に、原理原則以外での目先の枝葉の問題に振り回されて、いたずらに労力とお金を使っていて、お店の経営体力をどんどんそぎ落としているのが現状です。
即刻やめるべきです。
今から学んでも遅くない
今からでも遅くありません。原理原則、なかでも以下の原理原則は真剣に学んで理解しておいていただきたいと思います。
[1]お店(会社)の中のお金の流れを知ること。最終利益はどうやって出るのかを理解する
[2]顧客満足の総量が利益
[3]顧客満足は、手にできた価値が支払った金額より大きいこと
[1]のお金の流れがわかれば、最低限、お店(会社)が存続できるだけの利益がいくらかがわかり、固定費・変動費の経費の配分と適正金額(適正比率)がわかり、最終的に、その利益をもたらすための必要売上高がわかる。
必要売上高がわかれば、月次、週次、日時の売上目安がわかり、それを達成すれば給料としてこれくらいフォードバックできるという「保証」ができる。保証を従業員に約束することによって、従業員のがんばる理由が明確になって[4]の従業員満足は提供できる。
さらに、中長期のビジョンである数字の目標を掲げ、それを達成することによって、どれだけの望む未来が、お店・スタッフとも手にすることができ、豊かな未来を共有できるのかを、具体的にわかりやすく説明できる。
そうやって従業員満足を実現することによって、顧客満足を提供できる道筋がスタッフ全員で理解でき[2][3]、日頃の接客でどう生かし、反映していったらいいのか、知識(ナレッジ)として全員で共有できる。
原理原則がわかれば、あとは戦略・戦術に落とし込むだけであり、その落とし込み方にブレがなくなるのです。
消費税増税の消費不況に輪をかけたコロナ禍の、現在はとても厳しい経営環境に置かれています。こういうときこそ原理原則に立ち返るべきです。
無駄なお金を支払い続ける理由も余裕もありません。
「厳しい経営環境のもとでこそ
商売の基本の原理原則を
1つひとつ着実に実践していくことが
求められる。」
(松下幸之助)