好評の原理原則シリーズ
Facebookに連続で投稿して好評だった「経営の原理原則」シリーズ。
内容を多少改訂してまとめてみました。
今回は①から⑦まで。
混迷を極める現代だからこそ、経営の原点、基本のキに返ることはとても重要なことです。はっきりしましたね、このコロナ禍にあって、順調な業績をあげているのは、原点に立ち帰って、つまり原理原則を理解して地道に実践しているところなのです。
【経営の原理原則】その①
「顧客が求めているのは問題点の解決策である」
にもかかわらず、問題点を明らかにしないで、問題点を解決する手段に過ぎないカラーだのカットだの縮毛強制などのメニューを売り込む。
これを本末転倒と言います。あるいは、手段と目的のはき違えとも。
だから、メニューそのものの価値を生まない。価値を生まないから値下げで訴求するしかなくなります。
だってそうですよね、お客様の悩みを理解せず、いきなりメニューを売り込んだって、なんの価値も生み出すことなく、かえって迷惑ともなりかねませんから。
そこで、問題点を明らかにするためにカウンセリングがあるのです。
唯一にして絶対の営業機会がこのカウンセリングです。それに気づかずに、いきなり「今日はどうしましょう?」とやってしまうのですね。
そうではなく、カウンセリングによって問題点を明らかにし、それを解決すること。できるだけ解決するような姿勢で臨むこと。
解決するために、必要となるメニューや施術工程を提示し、あるいはホームケアのための店販品を推奨販売する。
けっしてこの順番を間違えてはなりません。
お客様のお悩みを明らかにして解決策を提示すること。これ以外で美容室の価値の向上はあり得ないのです。
お金の流れを知る
【経営の原理原則】その②
「会社は借金では潰れない。資金が回らなくなって潰れる」
借金返済をする原資は税引後の利益。
だから会社を維持しようとするなら、粗利、固定費(人件費)、人件費以外の固定費、税引前利益、税引き後利益、繰越金という6つの項目に注力し、経費のコントロールをしながら必要な支払いができるよう、つまりキャッシュフロー経営に徹することです。(下の図)
このように会社の中のお金の流れを知ることがとても重要。
どこの経費をコントロールするか、あるいは売上をどれだけ伸ばせば望む利益を得られるのか、この図を見ればたちまち理解できます。
私のクライアントさんはこの図をもとに、どの部分をどうやって経費コントロールしたらよいのかを理解して実践。結果は、望む利益を2倍、3倍にしています。
【経営の原理原則】その③
「緊急時には経費の削減。次に売上を伸ばす方策を考える」
②のキャッシュフロー経営の続き。
会社の利益を増やすには、経費を削減するか、売上を伸ばすかの2通りしかありません。
ところが緊急時には、経費削減が先。この順番を間違えてはなりません。
経営危機に陥っているにもかかわらず、アホなコンサルなどは、「気合を入れて売上を伸ばしましょう」「もっと集客に予算をかけて新規客を呼び込みましょう」「マーケティングを行って新しいメニューを導入しましょう」などとアドバイスをしますが、その間に会社は潰れてしまいます。
お金の流れのわからないコンサルの指導を受けていたら悲劇でしかありません。
信頼貯金
【経営の原理原則】その④
「利益は顧客の満足の値」
売上の多い少ないは関係ありません。
料金の高い低いも関係ない。
利益がいくら残るか。それはお客様の満足の値なのです。
【経営の原理原則】その⑤
「ブランドとは信頼の貯金箱。貯めるのは大変だが、失うのは一瞬で足りる」
ブランドとは、競合との圧倒的差別化、顧客ロイヤリティによる長期的・安定的売上確保、高い利益率といった特有の価値のことで、長い間のコツコツとした「信頼」の積み重ねによって初めて得られるものです。
ところが、信頼を失うにはほんの一瞬で足ります。
まさに「貯金」と言われるゆえんです。「信頼貯金」です。
まして今日のようにSNSが席巻している時代。ネット上のクチコミの悪評はたちまちウイルスのようにスピードをあげて拡散していきます。
ある調査によれば、宣伝広告を信じる人は17%、クチコミを信じる人は83%に及ぶそうです。
しかも女性のクチコミは男性の3倍も伝達力があり、なかでも人間の心理的特性から、悪い評判こそ拡散力があるというのですね。
地域密着の美容室なら受けるダメージは決定打となってしまいます。
えらいこっちゃ、です。
悪い評価を受けたらどうするか?
ブランド戦略とは、イケイケドンドンではなくて、その辺を含めて構築する必要があります。
人時生産性を共通言語に
【経営の原理原則】その⑥
「人時生産性を業績の評価メジャーにする」
さまざまな生産性の指標がありますが、理美容業こそピッタリの相性を持つのが「人時生産性」の評価メジャーです。
粗利益額をスタッフ(社長・役員・事務員すべて含む)の総労働時間で割って求めます。
美容室の平均値は2000円と極端に低いのが実情です。
しかも、組織が大きくなればなるほど生産性は低くなるという傾向があります。
2000円を、1日9時間労働、月23日勤務、労働分配率(粗利に占める人件費の割合)55%で計算する。2,000円×9時間×23日×55%だから、
支給できる給料の限度額は227,700円。
年収にして2,732,400円。
だから、あらゆる業種業態で最低ランクに位置されてしまうのです。
その程度の年収しか払えないで、自分の役員報酬の額をSNSで発信して自慢する経営者がいたりしますが、従業員からは恨みを買うのは必定です。お話にならないレベルですね、まったく。
年収自慢をするなんて、どういう原因かわかりませんが、ある種のコンプレックスの裏返しでしょうね。
人時生産性を上げるには、粗利を上げる、スタッフ数を減らす、労働時間を減らす。この3つしかありません。それには、売上に直結した仕事、つまり稼働率を上げること。アイドルタイムを削減すること。
こうやって目の付けどころがはっきりすれば、後はどうやって稼働率を上げていくか?
私のクライアントさんのA社は、大型店ですが人時生産性は3000円を行ったり来たりといった、割と良好な業績でした。それを、ある改善ポイントを見つけて集中的に取り組んだ結果、わずか数カ月で人時生産性が4000円になったのです。半年後には4500円になって安定しています。
そこであなたに質問です。
上記の条件は変わらずに労働分配率55%、1日労働時間9時間、月23日間働くとして、このA社のスタッフにはいくら給料を支給できますか?
答え:512,325円
もっとも、全額支給しなかったとしても内部留保として資金をプールできますね。
とはいえ、いままで手にしたことのない給料の額を手にしているのは事実で、私はスタッフの喜ぶ顔を目撃しています。
こんな話をしても、相も変わらず売上を生産性と同一視している人には、馬の耳に念仏でしょうね。「人時生産性」を業界の共通言語にしたいと20年前からがんばっているのですが、道のりはまだ遠いようです。
【経営の原理原則】その⑦
「集客も採用も同じマーケティング」
魚のいるところに釣り糸を垂れる。これはマーケティングの鉄則。
しかし現在のようにモノやサービスが供給過剰になると、マーケティングは単純にはいきません。
・どんな市場(ニーズ)を選ぶのか(セグメンテーション)
・どんな魚を狙うのか(ターゲティング)
・どんなエサで釣り上げるのか(ポジショニング)
というマーケティングのSTP戦略を駆使する。
これは集客も人の採用も一緒のことです。
≪つづく≫
「ごくわずかの例外を除き、
原則と手順を理解していれば
問題は実務的に解決できる。」
(ドラッカー)