だったら美容師お辞めなさい
【経営の原理原則】その⑬
「店販品売上は信頼のバロメーター」
この原理原則シリーズの第1回目に「顧客が求めているのは問題点の解決策である」と述べました。
解決するためには、サロンでの施術ばかりでなく、日頃のお手入れ、つまりホームケアが欠かせないものです。
そのための推奨品が店販です。医師の処方箋となんら変わるものではありません。
ですから、店販品が売れないのはその人がお客様から信頼されていないからにほかなりません。
同じ推奨品がネットで安く手にできるから(だから売れない)と反論する人もいます。
いやいや、信頼があれば、「あなたから買いたい」となるはずです。(そんな消費者心理は別の機会で説明したいと思います)
「私たちは物売りじゃない?」
それはプロとして責任放棄をする詭弁に過ぎません。
だったら美容師お辞めなさい、と言いたい。
ミッションの偉大さ
【経営の原理原則】その⑭
「モチベーションではダメ。マインドセットがモノを言う」
業界にもモチベーションを売り物にするコンサルがいるようです。確かにスタッフをセミナーに通わせれば、やる気モードは飛躍的に上がるでしょう。
ところが、やる気は3日と続きません。あのセミナーの熱く燃え上がった気持ちもとたんに冷えてしまいます。
なぜなら、やる気を継続させる仕組みがないからです。
それでまた、自分自身も、スタッフも、鼓舞させるためにモチベーションのセミナーに通う。
そんな繰り返し。一時的な熱気に酔いたいがために。これでは本末転倒、お金と時間の無駄です。
マインドセットとは、端的に言えば、経営者の事業の目的や使命感(ミッション)に共鳴すること、心から賛同することが欠かせないのです。だから意識の状態が何段かギアアップして、そのままの状態を長い間保てることができるのです。
「私なりに考えたその使命というものについて、従業員に発表し、以来、それを会社の経営基本方針として事業を営んできた。従業員も私の発表を聞いて非常に感激し、いわば使命感に燃えて仕事に取り組むという姿が生まれてきた。一言にして言えば、経営に魂が入ったといってもいいような状態になったわけである。」(松下幸之助)
「信念が変われば 思考も変わる
思考が変われば 言葉も変わる
言葉が変われば 行動も変わる
行動が変われば 習慣も変わる
習慣が変われば 人格も変わる
人格が変われば 運命も変わる」
(ガンジー)
あなたのお店の、会社の、ミッションはなんですか?
それを従業員に浸透させて行動まで落とし込むために、具体的な方策(仕組みづくり)をしていますか?
繁栄か衰退か、それを決するのはミッションであると言っても過言ではありません。
肺肝を見るごとく
【経営の原理原則】その⑮
「あなたは2つの眼でしか物事を見ることができないが、スタッフは人数×2の眼であなたを見ている。それも、とても厳しく」
中国の古典『大学』の中に次の言葉があります。
「人がおのれを視ること、その肺肝を見るがごとく」
『大学』は儒教の教書の中でとくに重要とされる四書の中の1つです。ちなみに四書とは『論語』『大学』『中庸』『孟子』のことで、さらに四書五経といって五経とは『易経』『書経』『詩経』『礼記』『春秋』のこと。この四書五経を学ぶことは当時の中国のエリートたちにとって必須のことでした。
日本でも江戸時代には寺子屋を通じで広く庶民が四書五経を学習しました。だから識字率の高さは世界一で、その教養の高さに日本を訪れた当時の外国人たちは一様に驚いたといいます。
そして、こうも思わせたのです。「日本民族は侮れない」と。中国(清)を侵略したようにアヘン戦争など仕掛けて日本民族を手玉に取るのは困難だと。話が脱線しました。
東洋思想を現在の経営に活かしたい私としては、おおいに強調したい言葉がこれです。
「人が自分を視る」見るとしないで、わざわざ「視る」としているくらいですから、ねっとりとした視線のねばつきを感じます。それくらい見られているわけ。
何を? 自分のことを。まるで「肺肝を見る」ように。肺臓や肝臓まで見抜くほどにも他人の眼に鋭く見られているということ。
スタッフ(社員)からはもっと厳しく見られていると思ったほうがいいです。30人のスタッフがいれば厳しい60個の眼で経営者を観察している。
100人のスタッフがいれば、200個の眼で見られているというのは現実的ではないとすれば、10人の店長と本部スタッフの数十個の眼で日頃から経営者は観察されているのが実情に近いでしょうか。店長はそれぞれ10人のスタッフがいれば20個の眼で観察されているのです。
どんな目で?
「肺肝を見るように」鋭く見られているということです。
だから表面を取り繕ってもダメです。すぐ見抜かれます。
トップに立つとはそういうことです。
そして『大学』はその言葉の次にこういう言葉を継ぎ足しています。
「ゆえに君子は必ずその独(どく)を慎むなり。」
だからリーダーたる者は、必ずおのれ自身を慎んで修める修行が大事だというのです。
リーダーたるに相応しい人格を身につけなければならない、というわけ。「独を慎む」ですから、人の目に触れない一人のときであっても、常に自分自身の身を、言動を慎むこと。
ところがSNSなどでは、うまいものを食った、うまい酒を飲んだ、ブランド物を身に着ける、高級外車を乗り回すといった写真や記事を自慢気に載せる人がいるようですが、スタッフからどういう眼で見られているか想像力をちょっと働かせてほしいと思うのですね。
独を慎むためには良書にふれること。なかでも良書の最高峰が『論語』だと確信します。
入るを量りて出るを制す
【経営の原理原則】その⑯
「入(い)るを量りて出(いず)るを制す」
儒教の経典『礼記』に記されている財政の心構えです。正確には「入るを量りて出るを為(な)す」。
二宮尊徳の言葉で知られ、最近では稲盛和夫氏がJALの再生を引き受けたときに記者会見で語ったのもこの言葉です。
古くは、米沢藩を立て直した上杉鷹山がいます。みずからが倹約を旨とし、生活を切り詰め、食事は常に一汁一菜で、衣類も絹物は着用せず、一生、木綿服で通したと言われています(出るを制す)。
そして、荒れた農地を耕し、特産物生産を新興し、農村経営の多角化による収益の構造改革を推進した(入るを量る)。
(私が私淑する山田方谷は鷹山を上回る発想とスケールで備中松山藩の財政を立て直しましたが、敗れた幕府側の賊軍に属していたため歴史の表面から葬り去られました。長くなるのでここではふれません。)
現在のように、「入る(収入)」が減るのが当たり前の経営環境のなかでは、「出るを制する(経費削減)」で無駄な出費は極力抑えた予算を作成し、剰余金(繰越金)を必死で生み出すこと。
そして生み出した剰余金を未来の売上の核となる新規事業創出や人につぎ込んでいく。
これこそ「入るを量りて出るを制す」という真の意味であり、今のコロナ禍、最も求められている経営姿勢であるでしょう。
顧客満足と従業員満足
【経営の原理原則】その⑰
「顧客満足=価値>価格
顧客不満足=価値<価格」
支払った価格(料金)以上の価値を受け取れば満足。反対に、受けた価値以上の価格だったとしたら不満足となります。
だから、価格というのは、絶対的な安い・高いという基準はないということ。受けた満足の度合いによって、満足か不満足かが決まるのです。
つまり、個人個人の相対的な価値によって決まるということですね。
付近のお店よりも高い料金であってもお客様は満足して通い続けている。反対に、安い料金であっても、いつも新規客ばかりで固定客にならない。そんな例はどこでも見受けられます。
繰り返します、料金に絶対的な値決めはないということです。近隣のお店を相場として料金決定をしてしまうと、取り返しのつかないことになってしまいます。
これが価格決定メカニズムの一筋縄ではいかないところなのですが、要は、いかに満足する層を特定し、集客し、満足する価値を提供できるか、なのです。
そうすれば、同業他店とくらべて高い・安い・値ごろなんて発想は不要となります。
いかに自店の独自性を打ち出していったらよいか。
そういう思考の習慣づけが、新たな価値の創造につながる、あなたのお店の独自性や卓越性を見い出す原動力となるのですね。
【経営の原理原則】その⑱
「望む利益は従業員満足次第」
従業員が満足して働かなければ、望む利益は得られません。
利益とは顧客満足の総量ですから、従業員が満足して働いていないお店ではお客様も満足しないのです。
まして理美容業のように、人的なサービス100%で成り立つ業界であればなおさらです。
ブスッとしていて愛想のひとかけらもない人に接客してもらったら、お客様は悲劇というもの。満足どころか、不満足しか残らない。いや、それどころかクレーマーの発生となってしまうかもしれない。そしてSNSで言いふらされたらたまったものじゃありませんね。
だから、儲からない。原理原則です。
従業員満足に絶対欠けてはいけない2つのこと。
それは「物」と「心」の両面で初めて満足は実現できるということ。これも原理原則です。
物心の「物」とは、給料をベースにした労働条件の満足のこと。「心」とは、経営者であるあなたのミッションとビジョンに心から共鳴して働くことです。最強なのは、経営者であるあなたのビジョンと従業員のビジョンが一致すること。
以上17、18の内容については、私の過去のブログ「経営は原理原則で成り立つ」を参照していただきたいと思います。
≪つづく≫
「私はイチゴクリームが好物だが、魚はどういうわけかミミズが大好物だ。だから魚釣りをする場合、自分のことは考えずに、魚の好物のことを考える。」