土俵は自分で用意する
【経営の原理原則】その⑲
「同じ土俵で戦わない」
資本力も違えば店舗規模も違います。にもかかわらず、客層、メニュー構成、料金設定、営業時間といった同じ土俵で戦おうとする。
だから、負けるのです。
こんな格言があります。
「美しい女性を口説こうと思ったとき、ライバルの男がバラの花を10本贈ったら、君は15本贈るかい? そう思った時点で君の負けだ。ライバルが何をしようと関係ない。その女性が本当に何を望んでいるのかを見極めることが重要なんだ。」(ステーブ・ジョブズ)
もちろんここで言う「バラ」とは同じ土俵ということ。
15本のバラを贈るということは、同じ土俵で戦って、少しでも顧客の気を惹くために料金のダンピングや過剰な特典を付与するということ。
・・・だから、
あなたのお客様とは誰ですか? 勝手に競合と位置付けている巨大チェーン店のお客様と一緒ですか?
一緒でないとしたら、あなたのお客様は誰で、そのお客様は何を望んでいるのですか?
あなたの得意とする、また、それを望んでいるお客様が存在する市場で戦うこと。
つまり、戦う土俵は自分で用意せよ、ということ。
それが、同じ土俵(市場)で戦わないことの極意なのです。
魅力の店舗 3つの要件
【経営の原理原則】その⑳
「顧客満足より顧客感動
顧客感動より顧客感謝」
顧客満足とは、価値>価格のこと。
このレベルのお店は増えました。事実、顧客満足度のアンケートを取れば、5段階評価の4レベルが多いはずです。
ただし、これは絶対の評価ではないのはもちろんのことなのです。他のライバル店でそれ以上の満足を得られると知れば、あなたのお店から離脱してしまう可能性は否定できません。
(ちなみに満足度調査ではなく不満足度調査を行うと、より正確な声が聞かれる。不満足度調査とは、不満から聞き出す、しかも7段階評価で、というのがコツ)
だから、満足レベルではなく「感動」なのです。
感動とは、感情が動くと書きます。感情を動かすにはある種のサプライズが必要です。誕生日や記念日に何かのプレゼントを差し上げるといったことです。
プレゼントをオトリにして来店を促すのではサプライズになりません。かえって、お店の側の腹の底がわかってしまって嫌なもの。
そこで、手ぶらで来ていただけるようなお祝いを準備すること。たとえば、生花やヘアケア商品など施術を受けなくても渡せるものを用意することですね。
そして、さらに「感謝」です。
お客様に対して、きめの細かい気遣いをすることです。店舗がお客様を惹きつけて離さない3つの要点があります。
- 情報力
- 企画力
- 提案力
の3つです。それらをミックスしてお客様に提案してみる。
何を?
お客様のライフステージがもっと生き生きするような施術メニューの提案のことです。こんなふうに。
「いつも当店をご利用いただきましてありがとうございます。今されているスタイルで大変お似合いなのはもちろんなのですが、じつは私たち全員で話し合ってみたんですね。そこで〇〇さんにぜひ提案してみたいなっていうスタイルを考えたんです。〇〇さんらしく、でもこの辺でちょっとイメージの冒険をしていただいて、〇〇さんがもっと引き立つスタイルをと。聞いていただいてよろしいですか」
マーケティングの神様といわれるコトラーが提唱するマーケティング4.0、つまり「自己実現欲求」に“ど・ストライク”の提案であること、さらに、こんなにも自分のことを気遣ってくれることに対しての感動を通り越した感謝を自然に引き起こす要素が詰まっている、そう、「魔法の言葉」であるからです。
あなたのお店は、お客様にどれだけ感謝されていますか。
せめて上位客には定期的にこの程度の提案をしましょうね。
上位客の離脱は取り返しのつかないほどのダメージを与えます。
離脱の一番の理由は「ただ、なんとなく」なのです。
そう、情報力、企画力、提案力がなされなくなると、魅力に乏しいお店になって、「ただ、なんとなく」お客様は離れていってしまうのですね。
【経営の原理原則】その㉑
「オレがいなければ組織は回っていかない
オレがいなくても組織は回る」
マネジメントがわからない人は、自分が技術の面においてもトップでいなければ気が済まないものです。売れっ子ナンバーワン美容師として君臨し続けたいと。なかには、売上は自分ひとりで作っているなんて考えている人もいます。
“オレがいなければ組織は回っていかない”との傲岸不遜な考えが芽生えます。
あるいはこうとも言えます、自分が一番でなければ不安だという心理がそこに働いているからと。
これでは組織は大きくならないし、人も育ちません。技術志向の理美容業界にはこういった例が多すぎるほどありますね。このシリーズ10回目で「組織は経営者の器以上に大きくなれない?」でやりましたが、その典型的な例だと思います。
それではダメなのです。あなたがいなくても組織はちゃんと回っていける。これがマネジメントというものです。
ある程度のスタッフをかかえたら、できるだけ社長業に専念しましょう。社長の専権事項はとても大きくて重要なことばかりなのですから。
どこかの経営者グループは、入会の条件がハサミを置くことだといいます。
顧客迎合はダメ
【経営の原理原則】その㉒
「顧客の創造ではなく顧客への迎合は即刻やめる」
マーケティングに裏付けられた正しい企業活動は「顧客の創造」。
別名、「新しい市場の創造」とも言えます。
ところが、顧客の創造に取り組むことを忘れて顧客に迎合する例が後を絶ちません。
同じ商圏内のライバル他店とくらべて、値決めをしたり、クーポンなどの特典を付与したり、ディーラーの勧めに安易に乗ってメニューをそろえたり、店販品を仕入れたり、他店の成功事例をパクッたりして、なんでもかんでも、自分を見失って、これをやったらお客様から喜ばれるんじゃないかと、根拠もなしに迎合しようとしてしまいます。
これでは自らの首を絞めるようなものです。
顧客の創造はもちろん目指すところですが、顧客への迎合はよくありません。
自分のビジネスのかけがえのない独自性をハナから諦めていることですし、自分の人生さえ見失うことに等しいからです。
お釈迦様はこう言いました。
「天上天下唯我独尊(てんじょうてんげゆいがどくそん)」
人間に生まれた者だけができる、たったひとつの貴い使命がある。
おしなべて貴い、あなただけの生き方を貫き通そうじゃありませんか。
だって、たとえ世界で70億人の人がいようとも、容易にあなたを見分けられるから。
あなただけの独自性が輝いてそこにあるのだから。
最重要な顧客の価値
【経営の原理原則】その㉓
「事業にとって最重要なことは顧客にとっての価値」
「顧客の価値とは何か?
最も問うことの少ない問いである。答えは明らかだと思い込んでいるからである。
品質が価値だという。
この答えはほとんど間違いである。
顧客は製品を買ってはいない。欲求の充足を買っている。彼らにとっての価値を買っている。」(ドラッカー)
事業とは、顧客の価値と考えているものに、自社の強みを使って貢献していくことなのです。規模の大小は関係ありません。
顧客の価値に対する貢献なしには、組織が存続することはできません。
顧客の価値に自社の強みをどうやって結合させるか。
これが事業のキモと言えます。
もうひとつ、ドラッカーの言葉。
「強みに集中せよとの格言は常に正しい。」
【経営の原理原則】その㉔
「競合相手は同業種にとどまらない」
可処分所得(自由に使える手取り収入)をどう振り分けて使うかは100%、顧客の側が握っています。だから、その振り分け先の競争になるのです。
あなたのお店が他の消費支出、たとえば洋服を購入する、コンサートへ出かける、外食をする、なんて場合とくらべて優先順位で勝てるのか、価値で勝てるのか、そういう勝負になっていることに気付くべきです。
あこがれのアイドルグループのコンサートチケットがやっと入手できて7000円、美容室のカット&カラーの施術料金が同じく7000円とします。手にできる情緒的価値はどちらが高いか? こういう競争下に置かれているということです。
つまり、自由につかえて、なおかつ限りある消費できるお金のすべての支出先が競合であると言えます。
競合は同業者だけと錯覚していたら足元をすくわれます。
非顧客に注目
【経営の原理原則】その㉕
「非顧客に注目せよ」
「最も重要な情報は、顧客ではなくノンカスタマー(非顧客)についてのものである。
変化が起こるのは、ノンカスタマーの世界においてである。」(ドラッカー)
既存客を見ているだけでは没落するとドラッカーは言います。
昔、デパートは既存客である中年女性だけを見て手厚くサービスをしていました。就業機会の大きな変化によって中年女性が働きに出るようになり、デパートの閉店時間までに行けなくなってしまって大きく売上を落としたのです。
その際に、パルコやルミネなどが、現時点での非顧客である女子高性や女子大生に焦点を当て売上を回復させたのですね。
そこから時代は進んで、生活が夜型にシフトした結果、“開いててよかった”のコンビニの時代になりました。
そして現在はネットの時代です。
現顧客だけではなく、現在あなたのお店のサービスを利用してもいいのに、なぜか利用しないお客様を常に見ていく必要があります。また、なぜあなたのお店に来ないのか、その理由を知る必要もあります。
それは、あなたのお店を知らしめる宣伝活動が、さまざまな意味において不備であるという理由が大半なのですが。
「決心する前に、完全に見通しをつけようとする者は、決心することができない。」
(アミエル)